この冬はあまり寒くなっていないような気がする。ただ、寒くはなくともTシャツでは歩けないので、長そでシャツにフリースかなにかを羽織っている。「猫」のように洗濯の必要のない一張羅が羨ましいと思っていたら、最近は服を着た小型犬がずいぶん多いことに気が付いた。犬も服を着なければならないようだ。
さて、ダウンジャケットについて先日書いてみた。
ここ15年ほど500FPを超える高性能ダウンジャケットがかなりコストを落として販売される一方で、1000FPという驚異的な復元力を持つダウンまで登場。やはり天然素材という空気が流れている。
ところが最近また化学繊維が盛り返していて面白い。今年の冬に入って山に行けていない腹いせにまた山ウェアについて書きつけてみたい。
一昨年にPatagoniaのナノエアを買った。
化繊ダウンは少し中途半端な立ち位置だ。暖かさと軽さ、コンパクト性はダウンの方が上。対して化繊は汗などの湿気に強いのがウリと言われる。ただ、汗をかくくらいの行動量なら暑いので着る必要はない。何に使うのだ?
そんな文句を垂れていながら、アウトドア雑誌を眺めると「化繊ダウンもここまで進化」とかいう謳い文句が目に付くようになり、なんだか気になる。化繊ダウンの特集が組まれていて、使わないとソンみたいなことが書いてある。
気がついたらPatagoniaのサイトをポチっとやってしまった。アウトレットといはいえ25000円以上した。面白半分にしては高すぎる。
ナノエアのは表面がダウンジャケットのようにテカテカしていない。通常の防寒着は風をシャットアウトするのも重要な役割で、撥水・防風の生地が多いのに対して、ナノエアはドテラかコタツの布団みたいだ。
山に初投入したのは冬の丹沢・早川大滝。宮ヶ瀬湖から丹沢山北部に 位置する日本百名瀑の一つを見に行くというもので、かなりマニアックなところだ。冬はヒルもおらず、水量が少ないので渡渉も楽とはいえ、人はほとんどいない。
日中は谷間で風もないので、ベースウェアにフリースという格好で行動。滝に着き、そこから尾根に上がるルートを選んだ。
尾根に抜けるルートは大滝新道と呼ばれ、『山と高原地図』に載っていないものの、トラロープが張っていたりと迷うことはない。ただ、滝の上部で一緒に行った仲間が雪面をトラバースしている途中に落ちかけてかなり焦ることになった。
尾根に上がる雪道は膝下くらいのラッセルで、シャツ1枚という格好で移動。気温は0℃くらいだろう。
写真はまだ日中なので暖かった。赤い服はパタゴニア・キャップスクリーンミッド。傾斜と深雪に足を取られ、汗までかいた。汗のしみたシャツに時折吹く風が冷たい。
ところが冬の日は短く、日が傾くと急激に寒くなる。尾根に出ると風も少し強まったので、ここで私は秘密兵器ナノエアに袖を通した。
残念ながら暗くなっていてナノエアを着た写真はない。
着てみるとフィット感はなかなかで、少し厚手のフリースを着るような感覚だ。フリースと違って風もシャットアウトしてくれる。
寒くなったとはいえ登りで使うには暑い。風を防ぐ分、熱や湿気がたまるのは避けられない。丹沢山の少し下から北側の三叉路までの下りで使ったが、早足になると暑く、ゆっくり歩くにはちょうど良いという感じ。完全に止まると寒い。
やはり万能とはいかないようだ。
良かったのは私の偏愛する胸ポケット。脇腹ポケットは入れたことをよく忘れるので、この位置がいい。2つ付いているが、個人的には1つでいいかな。
ここから余談(このブログそのものが余談みたいなもんだ)。
私にとって化学繊維のインサレーションはダクロンの寝袋が最初である。とは言ってもこれは私の父の所持品だった寝袋で、今から40年ほど前のものになる。当時、 アメリカ・デュポン社の中空繊維ダクロンを使った寝袋が発売され、私の父が飛びついたのだった。
今でもそうだが、ダウンは濡れるとどうしようもなくなるのに対して、濡れに強い繊維として一躍脚光を浴びていた。今私が使っているモンベルの厳冬期ダウンシュラフ#0とあまり変わらず10Lくらいの容量があるわりに、保温性はスリーシーズン用くらい。
とにかくダウンに比べてかなり嵩張るという印象だった。現行のナノエアも、モンベルの出すエクセロフトも大きな違いはなく、ダウンの2割か3割増しくらいというイメージで、ダウンを完全に上回ったとはまだまだ言えない。
総括すると、ナノエアは
・ゆっくり下山など運動量が少ない時はちょうど良い。
・冬に静止状態だと寒いが、春秋くらいの気温の時が最適(ダウンより心持ち寒いくらい)。
・収納はダウンよりやや大きい、軽量化には少し工夫が必要で、行動中に着ることが多いならその分収納にメリットとなる。
「猫のように一年中同じ物を着通せと云うのは、不完全に生れついた彼等にとって、ちと無理かも知れんが、なにもあんなに雑多なものを皮膚の上へ