クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

陸サーファーの登山

女性の友人が今度結婚するという。

彼氏はなんとサーファーらしい。サーファーと山女の組合せは珍しいと思ったら、彼氏はサーファーで山屋なんだそうだ。これが本当の「陸サーファー」である。

その彼氏はなんでも水が好きなので、山登りと言っても沢が好きで、尾根歩きのエッホエッホのヤッホーは好きでないらしい。

 

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5月でもサーファーが多い伊豆の海岸

 

 パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードはクライマーでありサーファーである。

"let my people go surfin"(邦題『社員をサーフィンに連れて行こう』)という本があるくらいで、山と海と川を愛している。

そう考えると山屋がサーフィンをしてもいいとも思うのだが、どうもイメージとしては埋めがたい溝というか断崖があるような気がする。

サーファーにはチャラいイメージがつきまとう。何しろ暖かい季節は男も女も裸(水着は着ているが)。もちろん終われば海水を洗い流すので常に清潔爽やか。

それに対して登山は常に着衣で、風呂もロクに入らない。面倒くさくなると下山しても家に帰るまで風呂に入らない輩(私)もいるのである。

 

加えて、同じアウトドアをフィールドにしているにもかかわらず、登山には常に死とか遭難のイメージがつきまとう。

サーフィンだって危険には違いない。ただ、登山の目的である登頂の意味が「無事着いた」という生存確保の意味を持つのに対して、サーフィンの目的は「上手く波を乗りこなす」という純粋なスポーツとしてのイメージがある。

登山の「すごいね!」という誉め言葉は「よく死ななかったね」と言い換えることができる。つまり負債をゼロにしたという行為に過ぎず、「山登りなんて意味わかんなーい」という私が若い女性から時々言われることにつながるのだ。

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案外酷い目に遭った丹沢・源次郎沢

なんでもその「陸サーファーさん」は在宅勤務をしながら、天気がよければ波乗りに、悪ければ自宅でお仕事をされているという今どきのスタイリッシュビジネスマンらしい。それが沢登りからアイスクライミングまで一通りやるというからどういう人なのだろう。

サーファーと登山の相いれない関係についてどのように考えているのだろうか。

今度会う予定なのでそのあたりトクと訊いてみたいと今から考えている。

嫌がられるかな。

 

 町田康がパンクロッカーがやってはいけないこととして、ゴルフ、サーフィン、バーベキューを挙げていた。

ただ、登山をやってはいけないとは言っていない。

はたしてサーフィンをする登山者を町田康は認めるだろうか。