鎌倉に住む女性の友人宅に行った。
山の友人が結婚したお祝いに炊飯土鍋を持って馳せ参じたのだが、山ヤ同士のカップルということで、アウトドア派の夫婦同士で非常に楽しかった。
この二人は男44歳と女38歳、と年をバラしてしまうけど、いい大人ではあるものの非常に若々しい。片や夫君の方はサーファーで登山歴5年。奥様の方は登山歴10年以上で、沢から雪山登山までこなす。
鎌倉という海、山に囲まれた立地が羨ましい。思わず移住してシーカヤックを始めようかと考えてしまった。
お昼をごちそうになり、鎌倉散策の後、この新婚御夫婦宅に厚かましくお邪魔した。
家の前にはサーフボードを取り付けられる自転車があり、部屋には使い古したウェットスーツに、登山用ヘルメットやらが見える。
今は駐車場付きの物件にいるため、車を買おうか検討中らしい。鎌倉の唯一の難点は公共交通機関で山に行きにくいことか。車があればそれも解消されるので、大いにアウトドアライフを楽しめるに違いない。
20年あまりも一人暮らしを続けていた二人が一緒に暮らすといろいろあるだろうけど、とてもナチュラルな生き方をしているなと感じる。
「自由人」という言葉がある。何ものにも強制されず、自らの運命を決める人を指すらしい。
誰も他人に運命を握られているなどと考えて生きているわけではない。それでもある程度は社会の価値観に沿って生きている。幼少期は親の言う通りにし、学生は勉強に励み、社会人になったら何かしらの職に就き結婚相手を探す。
奴隷のように強制はされていないけれど、概ねそうやって生きていく。
いわゆる「自由人」はそのような生き方をしない。常識に縛られないことに価値を置き、縛られないことに快さを求めている。すなわち、親の言うことを聞かず、勉強をせず、職に就かない。
そこまで行かなくても、どこか他人と違う何かを求めて葛藤しているのが自由人願望と言える。
別に自由人ということを非難しているわけでなく、私を含めてみんなそういった願望がどこかにあり、結局は現実と折り合いを付けながら時を過ごしていくのだ。
私の場合も世間の常識に反発する気持ちが徐々に萎えた頃に結婚を意識し始めた。
この友人夫婦はどうなのだろう。
働いて稼いだ金でサーフィンや登山をして週末は外食を楽しみ、いい人がいれば結婚する。
いわゆる「自由人」が世間の価値観から反発するあまりに、その価値観に縛られているのに対して、あまりにナチュラルに日々を楽しむために仕事をしているようで、見ていて心地がよかった。
「羽生結弦はトンカツとか食べへんやろうな。よかった好きなもん食べれて」
羽生結弦が本当にトンカツを食べないかは知らないが、その友人は世間から賞賛を浴びる羽生結弦より、好きにトンカツを食べられる人生を選んでいる。