小説家・原田宗典のエッセイでフライで野球のナインを決めるというのがあった。例えば、「1番センター・コロッケ」、「4番サード・トンカツ」という具合だ。
明らかにV9時代の巨人をイメージしていて、コロッケは柴田勲で4番は長嶋茂雄である。個性豊かな選手に個性豊かなフライをなぞらえるのは面白い。
今回はまた個性的な2つをエントリーしてみた。
エントリーNo.3 カキフライ
カキをフライにした人は革命的だと思う。カキを最初に食べた人間もすごいと思うが、『魏志倭人伝』にも倭人は生の貝を食べるとされているので驚くに足らない。
「一体誰が?」と調べてみてもネットくらいではなかなか出てこず、銀座「煉瓦亭」が初めて出したという記事があるだけだ。
それにしてもエラい。
カキと言えば広島で、広島県人に言わせれば「カキは食い飽きとる」らしい。全員がそうではないと思うのだが、飲み会でカキの土手鍋をセットしたらそう言われた。カキ鍋に周囲に味噌を塗り、味噌の土手を崩しながら調理する。
鍋も美味いが、広島のカキは養殖のせいか少し臭みがある。
広島県人から言わせると「カキはフライが一番美味い」ようだ。本場の人間が言うから間違いない。そう聞くので広島赴任時代は独りカキフライをやっていた。
生で食べるなら北海道の大きな岩ガキが美味いが、フライなら広島の養殖カキが食べやすい。
カキの旬は秋から冬。「天高く馬肥える秋」で雪山登山前には人もカキフライで肥えなければならない。
エントリーNo.4 トンカツ
「僕のうちなどへ来て君あの松の木へカツレツが飛んできやしませんかの、僕の国では
トンカツではなくカツレツとなっている。
カツレツの由来はフランス料理の「コートレット」。コロッケと同様、フランス料理から来ている。そして今の形式で初めて作ったのはこれまた銀座の「煉瓦亭」。
この調子だと煉瓦亭では何でもかんでもフライにしていたのかもしれない。
トンカツの不思議は、なぜビーフカツやマグロカツより美味いのか。
主観の問題でもあるが、ビーフはよほどいい肉でないと固くなる。しかしいい肉をカツにするともったいない。マグロもいいやつは生で食べたい。そこそこの肉でも美味しいのは圧倒的にポークなのだ。
トンカツに使う肉は脂身が少ないのが基本である。揚げるので中まで脂が多いのはちょっとしつこい。中は淡泊でふっくら、外はサクサクが基本である。
ビーフやマグロはあくまでA級グルメ。やはりB級グルメの雄はトンカツでなくてはならない。
今やトンカツというかカツ丼が登山後の定番となっている。
カロリーを大量消費し、タンパク質がほしい。そんなワガママに応えるのがカツなのだ。