クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

除菌族と生臭族

ある朝、事務所に行ったらアルコール消毒液を自動で出す機械が置いてあった。

手をかざすとプシューと噴霧してくれる。昨日まではポンプ式で頭を押さえるものだったのだが、ポンプの頭を押す時にウイルスが付くのを防ぐためだろう。変にハイテクなものが登場して驚いてしまう。

私は相方から「家に帰ったら手洗いしなさい!」という注意をたびたび受けるくらいの衛生観念の人間なので、まあポンプの頭くらいは気にならなかった。しかし、除菌族の人は他人が少しでも触れたところは気になるのだろう。

 

そうこうしていたら今度は二酸化炭素メーターが置かれるようになった。別に温室効果ガスの排出量を測るわけではなく、室内の換気が必要かを判定するためらしい。

呼気が室内に滞留すれば二酸化炭素濃度が上がり、警告サインが出る。息をしても触れてもダメとなると人間そのものが穢れと言わんばかり。あまり気分の良い話ではないけど、コロナ対策ということでやむを得ない。

ただ、アルコール除菌はどのタイミングでやらなくてはならないのか、換気はCO2濃度だけで判定していいのか。甚だ疑問だ。

除菌した手で共有の本を触ったら除菌し直しするべきか?トイレで用を足して手を洗った後にまたアルコールを噴霧すべきか?パソコンは?ペンは?

触ったらウイルスや菌に捕まるみたいな呪縛があって気味が悪いし、気にしだすともう何も触れないのではないかという感じがする。

 

一方でアウトドアに行くとウイルスとか菌とか気にしても仕方なくなる。

 土に触れないことはないし、おそらくその中には何万匹もの常在菌がうようよ。見えないからいいようなものの、危険性は低いけど数だけは都会の比ではないだろう。

去年、八ヶ岳の白駒池に行ったらテント場にアルコール液が小屋の前に置いてあって非常に違和感があった。日々落ちた葉っぱを分解して土に還しているのは細菌類などであって、それを死滅させることは森の死を意味する。

アルコールもまた細菌が生み出す。

善悪を言うつもりはない。ただ、非常に違和感である。人間も生物の一である以上は細菌も、そして死も避けることはできない。

f:id:yachanman:20210208193445j:plain

 

 家にある服部文祥『サバイバル登山入門』の表紙裏に服部さんの直筆サインがある。(最近よく服部さんが出てくるなあ)

本人に会ってもらったわけでなく、石井スポーツにサイン入りが売られていたのを相方が買ったのだが。

そこにはこう書いてある。

「生きるって生臭い」