クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

屋久島の杉さん〜屋久島放浪記①

屋久島に行った。緊急事態宣言とかいろいろあるけど、まあ休みが取れるのが緊急事態みたいなものだからまあいいかと。

今回は4年前に行った屋久島再訪。4年前は楠川集落から徒歩で入山し、宮之浦岳へ。縦走して淀川登山口に下山した。

今回はその逆を行く。

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初日は屋久島空港から安房までバス。安房の登山用品ショップ「山岳太郎」でガスカートリッジを入手。安房の登山用品ショップでタクシーを呼んだ。

屋久島交通のタクシーが5分ほどで来た。

タクシーの運転手は

「登山ですか?」

と訊く。登山が島やタクシー運転手にとってどれほど好感を持たれているかわからない。何しろ緊急事態宣言中なのだ。屋久島空港では新型コロナの広がっている宮崎や熊本に行くなと書いてあった。

「ええ。まあ」

とか言う。登山口に向かうのに登山以外の目的はない。

「晴れていたら最高なんですがね」

「明日から雨予報ですね」

しばし天気の話になる。登山客に嫌な感情はみじんもないらしい。安心した。

次に運転手は唐突に

「ヤクスギのことを知っていますか?」

と訊いてきた。

「宮之浦で資料館に行きました」

これが端緒だった。

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「ヤクスギというのは樹齢1000年を超えるものを言います」

そんなことを聞いたことがある気もするが。

「ヤクスギは立ち枯れたものに脂がたまっていいんですね。栂とかはダメです。ヤクスギは立ち枯れて脂がたまるから腐らないんです」

むむ、なるほど。豊臣秀吉が巨大建設を進めるのに際して献上されたわけだ。

運転手のトークは留まることを知らず、相方が車酔いでオエオエしながらもひたすらに語る、語る、語る。

相方は車酔いでそれどころじゃなかったらしい。

 

登山口に着いて相方が言った。

「あの運転手、なんて名前だと思う?」

うーむ。話すので、夢中で気づかなかった。

「あの人、杉一森っていうらしいよ。杉の木の杉に、イチのモリ」

なんと、名は体を表す。これほどぴったりの名の人はおるまい。

これが、屋久杉ワンダーランドの始まりだった。