相方が「授業のネタに何かないか」と訊いてきた。「子どもに考えさせるテーマがいい」とさらに注文してくる。
考えた結果、「くじ引きなんてどう?」と答えた。くじ引きは古来からある。どのくらい古来かまで知らないが、もめ事の解決に手っ取り早い。
有名なところで、室町時代に将軍をくじで決めている。四代将軍義持が死去した際、跡継ぎを決めていなかった。義持は一度、義量に将軍職を譲ったものの、義量が早世したため再び復帰。そのまま亡くなってしまった。
困った管領などの家臣は門跡に行かせた将軍家の血縁の誰かを後継者にすることに決める。ただ、「誰か」を決めることができないので、宮司にくじを引かせて決めたのだ。
今風に言えばサクセッションプランがなかったというわけだが、この結果将軍となったのは義教で、この後恐怖政治を敷き、最後は赤松満祐によって暗殺されることになるのだから、家臣側から言えば大変なくじ引きだったと言える。
これでは子どもたちに考えさせるということは不可能のようだ。
それではくじ引きは最初に引く方が得か、後から引く方が得かを考えてみればどうかと提案してみた。
4人の場合、最初の人は4分の1の確率で当たり。2人目は、1人目が4分の3で外して、3分の1で当たるので、やはり4分の1の確率。3人目は4分の3、3分の2、2分の1で当たり、4人目は3人目が外したら当たるので、3人目と同じ計算。
ざっと説明したが、要は全部同じである。
ところが、かつてはくじ引きの順番をくじ引きで決めていた。野球のドラフト会議や高校野球の対戦校を決めるときにやっていたらしい。理屈はわかっているだろうけど、公平であることを大げさにアピールしたかったのだろう。
考えないでいい方法を考える。この矛盾が世界のいろいろなものを生み出しているのかもしれない。