クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

電車の中の不思議な無関心

午後7時台の電車は混んでいた。

ここのところ9時以降に乗るので、よく知らなかったがすし詰めとまでいかないものの、かなりぎっしりという感じだ。テレワーク推進と言ってもできる人間は限られている。

 

外は雨なので、乗客は大抵傘を持っている。

座席に座った私の斜め前に立った男性は右手の肘に傘を下げ、その手でスマートフォンを見ていた。傘は電車やその男性の身体とともにぶらぶら揺れる。傘は濡れているので、先から滴る水がわずかだが、周囲に飛び散っていた。

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そんな状態が10分も経っただろうか。突然、私の隣、傘を下げる男性の前に座っていた太った大柄な中年男性が

「濡れる!」

と一言放った。

そうすると傘を下げた男性は、肘から傘を外し、左手に傘を持ち換えた。

不思議なことに、傘を持つ男性、太った男性ともイヤフォンとヘッドフォンをし、あとはひたすらスマートフォンを眺めているのだ。強い言葉に一瞬緊張した私は、これから何か起きるのかと思っていたが、結局は2人とも自分の下りるべき駅で何事もなく下りて行った。

あたかも2人は互いが空気のように。