クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

夏の奥穂高岳登山②~穂高岳山荘から奥穂高岳へ

穂高岳山荘は奥穂高岳涸沢岳の間の少し落ち込んだ部分にある。標高は3000m弱ということで日本で1番ではないが、最も高いところに位置する山小屋の一つである。

高い分、天候の変化も受けやすく、雨も風も受けやすい。ただ、この日到着した時点では雲は増えたものの、晴れ。風もなくみんなのんびりビールを飲んだり日向ぼっこをしたりしていた。

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この瞬間が山で一番好きだったりする。

頂上を極めるというよりボンヤリする時間。ビールを飲むか、つまみを食うか、本を読むか、景色を眺めるしかない時間。ただ、夕暮れを待つ時間。

やがて雲が湧き、景色が見えなくなった。仕方ないのでテントに引っ込んで本を読んでいるとウトウト寝てしまった。

しばらくするとパタパタとテントを叩く音がする。雨のようだ。慌てて外に出していた靴を前室にしまい、またウトウトする。

雨が止むと青空と雲が交互に押し寄せ、滝谷方面の景色を時々写真に収める。前穂高常念岳方面は曇ったままだ。

日暮れ時にはブロッケンが出た。光と影の狂騒を眺め、明日の朝に期待して7時には眠りに就いた。

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滝谷の岩壁





翌朝は霧。雨こそ降りそうにないが、白い闇が包み込んでいる。

アルファ米のカレーピラフと五目御飯を1.5人前ずつ腹に納め、穂高岳山荘の上にある梯子を登り始める。

頂上までは山荘から1時間ほど。数人の人が晴れるのを待っていた。

時折、雲が抜ける。青空が出る。そのたびに絶景を期待するが、すぐに雲が覆い、再び白い世界に戻る。雲と空の駆け引きが続いた。

そうこうしているうちに昨日に続いてのブロッケン。今回はブロッケンが出たことでヨシとしよう。

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ブロッケン現象

下山は岳沢に向かった。

吊り尾根はスラブ状の岩ルートが多く、雨の時は怖いことが多いが、幸いこの日はあまり濡れていなかった。それでもザイテングラートに比べると狭い箇所や滑りやすい箇所が多くていやらしい。

相方が昨日からの強行日程でバテ始めた。段差が膝に応えるようだ。

景色は見えないものの、下るにつれて暑くなり、樹林帯に入ると大量の蠅にたかられる。

しんどい、疲れる、暑い。終盤はなんで来たのかと思うくらい愚痴が多くなるが、降りる頃には結局また来ようと思うようになっていた。

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吊り尾根の岩ルート