クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

硫黄山からの知床縦走④ 羅臼岳へと羅臼までの下山〜北海道を巡る冒険

羅臼岳百名山の1つである。百名山ともなれば全国から山好きが押し寄せるものと相場は決まっていて、やはりたくさんの登山者が行き来していた。一般ルートは宇登呂の先、岩尾別温泉からの日帰り往復だという。

羅臼岳は海から登り詰めるため、1600mの頂上に対して登山口からの標高差は1400mから1500mくらいになる。奥穂高岳(3190m)が上高地(1500m程度)からの標高差で1500mであることを考えると、この日帰りは結構辛い登山だと言える。ただ、それ以上に硫黄山からの縦走をやってみると、羅臼岳だけのピストンではもったいないなというのが素直な感想だ。

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羅臼岳からの朝焼け

羅臼平にテントを張ったわれわれは翌朝4:30にテントを出て、羅臼岳を目指した。

知床半島は東西を海に挟まれている。われわれが行った数日は東から西から雲が押し寄せ、山頂付近は絶えず雲に覆われた。だいたいが午後になって霧が麓から上がるパターンが多く、島のような気象だと言える。その意味で早朝は最も天気が良く、羅臼平からは最も良い登頂シチュエーションとなった。

羅臼平から灌木帯を登ると羅臼温泉へ下る道と頂上までの分岐に行き当たる。そこに水場があるそうだのだが、この時は水がポタポタ滴るだけだった。

分岐からは岩場が増えることになる。サインが多く、難しいことはないのだが、東西から受ける海風は意外なほど強くて、身体を煽られる。ただ、北を見れば硫黄山から辿ってきた稜線が雲海の中に浮かんでいる。

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知床連山を望む

羅臼岳の頂上には数分いただけだった。

風が強くて身体が冷えてしまう。岩だらけの頂上を後にして花を愛でながらテント場まで下った。

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羅臼岳頂上

羅臼平に取って返し、テントを撤収したらのんびり下山を始めた。テントはフライシートがしっとり濡れていたが、本体はほぼ乾いていた。

羅臼平から羅臼温泉を目指す。当初、4時間くらいで下れると踏んでいた。そうすれば13時の釧路行きのバスに乗り、今日はテントではなく宿に泊まれる。

しかし、下り始めるとこの道が手ごわい。

草繁茂し、足を踏み外すと落ちそうな部分や硫黄の流れる川。地図を見ると渡渉するようになっていた部分では、水量が多くてどこから行けばいいかわからない。後で見たら羅臼温泉からのルートは上級となっていた。

下るほどに汗をかき、ついには当日のバスを諦め、国設羅臼野営場でのテント泊にすることとした。

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渡渉ポイントのわかりにくい川

そういうわけで山中二泊三日、下山して一泊のテント泊となった。羅臼温泉に着いたのは14時前。温泉「熊の湯」に地元の人とともにつかり、5kmあまり歩いて麓のコンビニで食材を買って食事をし、芝生のテントサイトで寝た。

黄山からの知床縦走は標高差も少なく体力的にはさほどでもない。しかし、山小屋もなくヒグマの出る可能性もあり、野性味が保たれているという点では非常に面白い。