秘境というところがあれば行ってみたい。
日本国内なら北アルプス・雲ノ平なんかはそう言われる。確かに薬師岳、水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳に囲まれた中に湖沼の浮かぶ大地は秘境感たっぷりである。
大杉谷を絶景として取り上げたが、黒部峡谷なんかも外界と隔絶された感がある。特に秋の紅葉は絶景そのものである。
いろいろ取り挙げるときりがないものの、本当の秘境を見つけるのは難しい。秘境として知られている以上はすでに秘境ではないという矛盾があるからだ。
それでもついついWebや雑誌や書籍で「秘境」と見るとふらふらと行ってしまうのがこの言葉の魅力である。
③知床の山
今年、ここはなかなかと感じたのは知床の硫黄山近く。
知床の山としては羅臼岳が知られており、百名山ということもあってそこの往復は人が多い。ただ、その北方に伸びる知床連山を縦走するとなると交通の便も悪くて一気にすくなくなる。
人が少ないのは秘境にとって重要な要素である。「秘」ある以上は人が知らなくては意味がない。その知られざる奥地の中のキャンプ指定地が私にとっての秘境となった。
知床の最奥、硫黄山から少し下ったところに第一火口キャンプ指定地というところがある。連山の稜線から少し下った台地で、水場は残った雪渓。フードコンテナがあるだけという人工物の極めて少ないところだ。
私たちが行った時は、先客が1人。その奥にはさらなる先客として鹿1頭がいた。鹿は何の警戒感もなく草を食んでおり、優雅に飛び跳ねながらそのうちどこかに行ってしまった。
キャンプ指定地からは遠く羅臼岳、目の前には知円別岳。チングルマが咲き乱れ、地上と隔絶されたような景色が広がっている。
地図にはヒグマ注意とあるからむやみに食べ物を出すわけにいかないが、ぼんやりと外にいるだけで贅沢な時間がタダ流れていく。
翌日は知円別岳を回り込むと知円別平に出た。ここは幕営禁止だが、泊まれたら最高と思える場所である。
結局、絶景三選として選んだのは①屋久島、②大杉谷、③知床とやや脈絡のないものになった。これからもこの三選は変わっていくだろう。私にはまだ見ぬ絶景がたくさんあるに違いないのだから。