硫黄山登山口から登った初日、予想外の道に手こずり第一火口の幕営地までしか行けなかった。地図を確認すると2日目は羅臼まで12時間以上かかることになる。朝4:30に幕営地を出ることにした。
天気は晴れ。しかし、知床は海に挟まれた半島であり、予断はならない。雲が半島の東西から押し寄せる可能性がある。
知円別岳の岩壁を巻き、灌木帯を降りるとそこは知円別平と呼ばれる台地となる。
知円別平はある意味で知床縦走のハイライトと言える。
灌木帯を抜けて突然現れるストレスのない台地。北アルプスの雲ノ平を少しスケールダウンさせたような景色。しかし、人工物が少ないという意味では雲ノ平以上だろう。海が見えるという意味ではここにしかない景色。チングルマが咲き乱れている。
知円別平から南岳の方に上がると初日に目的地にしようとした二つ池が見えた。とてもここまでは初日に来れなかったということで相方と意見が一致した。
二つ池からオッカバケ岳、サシルイ岳方面に登り始めたところで山は霧に包まれた。本日のショータイムは終了ということになった。
二つ池からボツボツ人とすれ違うようになった。聞けば二つ池には前日7張ほどのテントがあったらしい。
サシルイ岳では環境省のシャツを着た集団とすれ違う。このパーティーは三ツ峰に前日いたらしい。1人の若い女性に第一火口で水が調達できるという話をしたらホッとした顔をしていた。
そこからも次々と登山者とすれ違う。そして必ず情報を交換し合う。熊はいるか、水はあるかなどなど。北アルプスなどでは見られない一体感がある。自然の大きさに身を寄せて乗り切ろうという意識が働くのだろうか。
2日目は羅臼平にテント泊することとなった。羅臼岳をピストンして羅臼に下山するには時間がとても足りない。それに霧の羅臼岳を登っても面白くないだろう。
羅臼平には水がないのが厄介だ。三ツ峰で水を汲み、浄水して坂を上がる。
知床縦走の大きな問題に水がある。エキノコックス対策で浄水しなくてはならないし、水場は二つ池を除けば涸れる可能性がある。汲める時に汲んでおけで4Lほどを持って羅臼平へ向かった。
羅臼平はもう霧に囲まれて展望もない。この日は羅臼岳への往復を諦めて幕営とする。テント場はわれわれを除くと3名の登山者がいた。そのうちの1人はつい先日利用した旭岳ロープウェーで働いており、1人は相方の高校のあった市の出身。1人は今われわれが住んでいる市の隣の市にかつて住んでいたという。
広い北海道で日本の狭さを感じつつ夜はたらふく食べて就寝となった。