クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

北海道での山中泊事情~北海道を巡る冒険

北海道から帰ってきて吉村昭羆嵐』を読んだらすっかり熊恐怖症になってしまった。

羆嵐』は大正時代に起きた日本最大の獣害事件で、2日間で6名の村人が殺害されたという事件である。「遠目にヒグマを見たいなぁ」などと考えていたが、読んでいると熊が怖くて仕方ない。行く前に読まなくてよかった。

そんなわけで登山においても本州と異なるのが北海道。北海道の山中泊において今回気を付けたポイントについて書き留めておきたい。

 

①水は浄化して使う

山中泊で命と言えるのが水。そして水は浄化するか煮沸して飲みなさいとある。

これはキタキツネを媒介とするエキノコックスという寄生虫対策で、エキノコックスに侵されると患部の切除しか治療法はないらしい。発症したら100%死ぬなんて書いているものもある。怖さはヒグマと変わらないような気がする。

そんなわけで今回はモンベルで売っていたグレイルという浄水器を買って持って行った。2層構造になっていて、外側の容器に水を入れ、上から浄水フィルターの付いた内側容器を押し込むと、浄水された水が内側容器に溜まるという仕組み。

浄水器の老舗としてはMSRのものもあるが、お値段高めで浄水の方法も面倒だとのこと。グレイルは水を入れて上から「こんにゃろ!」と押し込むと1分以内で300mlくらいは浄水できる。

お値段は8000円強だったがまあ命には代えられません。

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浄水器GRAYLUL

②野生動物にご注意

以前、神津島でキャンプをしたときに暑くなったテントの外に魚の刺身を出していると、カラスにさらわれたことがある。その時はまあ見事に封を切ってやられてしまった。

北アルプスの高所で食料を荒らされたという話はあまり聞かないが、北海道の場合はキタキツネがウロウロしているので要注意である。まあキタキツネは荒らすというだけで済むのだが、ヒグマが荒らしに来たら食料は自分自身となる恐れもある。

そんなわけで知床のキャンプ指定地には重い鉄製のフードコンテナが用意されている。

テント場とフードコンテナは10m以上離れるように設置されているので、フードコンテナの方で煮炊きし、テントでは食料を出さない方がいい。どの程度効果があるかはわからないが、テントに食料の匂いを付けないのが常識のようだ。

カナダやアラスカなどでは食料をビニール袋に入れて水中に沈めるなんていう方法もあるらしい。まあフードコンテナに入れるくらいならやるに越したことはないだろう。

ちなみに知床縦走では硫黄山・第一火口は素晴らしい場所だった。行くと大地の奥で鹿が遊んでいる。あたりはチングルマが咲き乱れ、楽園のようだ。こんな場所だからこそ野生動物も安心して出るのだろう。

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第一火口のテント場、奥で鹿が遊んでいる

③行動はお早めに

今回、北海道の山を縦走してみてわかったのは道標が少ないということ。あまりに道標も踏み跡もないとさすがに不安になり、何度も地図を確認した。

位置の同定は必要なことなのだけど、ルートを逸れていないかと常に不安に苛まれる。

対策はといってさほどないのだけど、日中早めに行動し、早めに着くことが肝要である。日没後にウロウロするのは夜行性のヒグマに遭遇する可能性も高めるし、迷うリスクをより高める。

行動はお早めに。

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ルートを逸れたと勘違いを起こした稜線

 つらつらと書き連ねたが、どれもこれも北海道の山が本来の野性味を残している証に違いない。したがって、注意しておけばより楽しい山中泊ができること請け合いなのである。