クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

網走監獄の味〜北海道を巡る食旅③

ウトロの知床丼について書いたけど、一つ遡って網走の話。

網走と言えば何か。相方に言わせれば寅さんなんだそうだが、私にとっては網走監獄である。最北の寂しげな景色、冬の凍える寒さ。過酷な環境で次々倒れる囚人たちという画が思い浮かぶ。

実際はどうだったかと言うと、網走刑務所は他の刑務所と違って豊富な耕地で自給自足できていたため、栄養失調になる率も低く、快適とは言えずとも環境としては悪くなかったらしい。特に戦中、戦後の食糧難の時期はむしろ刑務所の方が食糧事情が良いなんていう矛盾も生じたという。

そんな網走監獄(現在、網走監獄は旧網走刑務所を山側に移築した観光用の施設で、網走刑務所は駅から数百メートルの平地に今もある)はなかなか広大な敷地にあり、「どうせ雨だし」とのんびり見学していたらあっという間に12時半を回っていた。

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網走監獄の廊下

私はあまり知らなかったが、網走監獄の入り口にあるレストランの監獄定食というのが有名だという。理由は麦飯入りで栄養バランスが良く健康的だからなんだそうだ。

戦後の食糧難の時代も、現代の飽食の時代にも人気になるとは皮肉な話ながら、興味は沸いた。旅行中はなかなか普通の定食に食指が動かないものだが、腹も減ったしここで昼食を済ませることにした。

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 かなり人気なのか、監獄定食のホッケは売り切れ。残っていたサンマを注文。相方は鳥南蛮丼。

お店の人の話では、ホッケとサンマの定食は本当の刑務所のご飯に近いそうだが、あとはオリジナルらしい。丼の方も一応麦飯ではある。

味は、まあ普通というか、家で食べている夕食みたいなもんである。サンマはまだ時期ではないし、脂の乗りはまだまだだし、身も細かった。

相方は

「私の作ったご飯は900円の価値があることがわかった」

と言った。自分の作っているご飯と変わらないということらしいが、それは自画自賛なのか、自嘲なのかはちょっと判断しかねる。

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旅行中は得てして飽食というか食べ過ぎになりかねない。特に北海道はどこも「食え食え」とばかりの量が多いような気がする。

そんな中でホッとする定食が監獄の味だったりするのである。