最近、自分の血が気になる。血と言っても「中性脂肪値が低い。尿酸値はやや高い」というものではなく、自分のルーツ、血統。そんなことが気になるようになってきたのはここ最近で、自分でも少し驚いている。
私の先祖は商人だったらしい。詳しいことはわからないのだが、初代は薬問屋で、元は富山あたりにいたそうだ。富山と言えば富山散薬なので、行商をしながら畿内に出てきたのかもしれない。
だからなのか、我が家系には故郷に対する愛着が少ない。適度に便利で適度に自然があればどこでも住める。就職で東京に出て地元に帰るという人の話も聞くが、実家がなければ地元に帰る意味もそれほど感じない。
薄情なのだろうか。
藤原正彦『遥かなるケンブリッジ』を読んだ中で、我が子に「お前は武士の子だ」と語りかけるシーンがある。幼稚園でいじめられたのに対して、武士の子なのだから戦えと言うのだ。
わずか5歳か6歳の子に言うのだから無茶苦茶だが、武士の子は大変である。武士というのは武装農民の末裔なのだから、逃げたら食いはぐれるわけで、その意味では"Stand and fight"(踏みとどまって戦う)必要がある。そんな歴史的意義のもと父が子に語りかけたわけではないだろうけど、武士と農民はより土地に愛着がありそうだ。
藤原正彦さんの最近の主張を見ても祖国・日本を感じさせられるものが多い。これは武士の血がなせることだろうか。
カヌーイスト・野田知佑さんは父が造り酒屋、母方の祖母はブラジルに渡った移民だったりする。いずれにせよ土着するという意識は希薄なようだ。野田さんが人生を気楽に放浪し続けたのはこの血のせいなのかと思ったりする。
登山やカヌーなどのアウトドアを趣味にしている人では、家にこだわる人とこだわらない人がはっきり分かれる。私は持ち家には興味はないし、寝られれば十分というたちだ。
それも草枕だった先祖の血だからだろうかと最近思ったりしている。