クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

登山でリスクリテラシーは磨かれる?

勝間和代『会社に人生を預けるな~リスク・リテラシーを磨く』を読んだ。

もう10年も経った本だし、特に目から鱗がポロポロということはない。ただ、勝間和代という人が何を書いているのか知りたかったので読んでみた。

読むとサブタイトルにあるとおり「リスク」という言葉が何回出てくるのかというほど頻出する。もう1行に1個はある。それくらい日本人にはリスクに対する認識が足りないということを強調している。

確かに最近、企業の報告書も無闇やたらとリスクについて記載せよと求められているが、ただの作文にしかなっておらず、結論は「リスクを避けます」か「リスクがあると認識しています」というくらいだ。

リスクテイクの文化はまだまだ芽生えていない。

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5年前にずり落ちかけた西穂高岳

リスクという意味では登山なんかはリスクの塊みたいなものである。ビジネス上のリスクみたいに金銭を失うとかではなく生命がかかるものだから、おいそれと失敗できない。

それではなぜ行くのかと言えば気持ちがいいからだ。何が気持ちいいかと訊かれると「景色がいい」とか「空気がいい」という平凡な答えしかできないのだが、街にいるときよりちょっと研ぎ澄まされた感じが気持ちいい。

私は危険を乗り越える快感を求めるようなエクストリームな感覚を持ち合わせていないけど、それでも自分で自分の生命をコントロールしている感じが好きで登っている。

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白毛門ではうっかり後転してしまった

では登山に行くとリスクリテラシーが磨かれるかというとそうでもないと思う。

この勝間和代の本ではリスクリテラシーとは危険とその危険を冒して得られる成果のバランスを見て判断したり、リスクを分散したりと考えることを指している。登山をしても何の成果もないのだから、結論は登らなければいいといなる。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉があるが、頂上に虎児はいない。

ただ、言えることは登山の前には必死になって、悪天候や日没、雪崩、滑落などを想定している。用心して食料やビバーク装備を重くすると疲れて滑落のリスクが増えるし、ヘルメットなんかは万が一を考えると省けない。すべてはバランスということになる。

偉そうに書いたけど、ビジネスで言うリスクリテラシーとアウトドアでのリスクリテラシーは違う。

結局都会人は大自然に入り込まないと人間本来のリスクリテラシーが目覚めないのだと思う。