クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

ピッケルは危ない道具?

今シーズンはまだピッケルを使っていない。

去年の冬はどうだったかというとこれまた2回ほどだった。3月に会津駒ヶ岳、4月に白毛門。結果的にピッケルを本当に使う必要があったのは白毛門からの下りで、この時は軟雪をクライムダウンをしたので、なければ危ないところだった。

そんなピッケルなのだが、1シーズンに使う回数はめっきり減っている。

しかし、ピッケルは「武士の魂」と父が言っていたように山屋の象徴。少しばかりピッケルの蘊蓄を語りたい。

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阿弥陀岳の北稜にて

ピッケルというのはドイツ語。フランス語ならピオレ、英語ならアックスとなる。

私の父の所持品は木製シャフトのシャルレというフランス製のもので、美術工芸品のサイトによると今人気だという。

長さは172cmの私がヘッドを持つと地面を突くくらい。終始引きずることになるので今の感覚では長い気がする。

父の話では、ヘッドのショベル部分で凍った足場をカットして均すのだという。ただ、1980年前後の当時もアイゼンはあった。父に訊くと足場カットは知識としてあっただけでやったことはないらしい。

ではピッケルで何をしていたかというと、耐風姿勢と滑落停止の練習。

現在のピッケルはピックの部分にノコギリ状の返しが付いているが、昔のものはツルッとしている。この当時は「武士の魂」と言いつつも雪山で身を守るという面が強かったのだろう。

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なんだかんだよく登った八ヶ岳

このように身を守る道具であるピッケルなのだが、見た目は完全に凶器である。では歴史的にピッケルが凶器となった事例はあるかと言うと、1件だけある。

ロシア革命の英雄の1人、トロツキーが被害者となっている。スターリンとの政争に敗れメキシコに亡命したトロツキーだったが、書き物をしている最中に後頭部をピッケルで殴られて殺害されている。

うーむ。なぜピッケルだったのだろう。たまたまあったから?火曜サスペンス劇場に出てくるガラスの灰皿みたいなものか。

まあロシア革命という事件においても、登山界におけるピッケルにおいても重大事件である。

 

しかし、基本的にはピッケルは登山者が身を守る道具。

平和に山に登って平和に下るために今年も使いたい。