クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

今を一番楽しむために~山野井泰史インタビューを見る

天気の良い土日だったけど、どうも体調が今ひとつでのんびり過ごした。

日曜は「山と渓谷.ch」にあった山野井泰史インタビューをYouTubeで見た。山野井泰史と言えば、言わずと知れた日本を代表するクライマー。その山野井さんが今年、フランスの登山雑誌社が主催するピオレドール賞の生涯功労賞を受賞したのだ。

インタビューは受賞式の翌日、受賞インタビューを再び日本語で説明する形式となっている(授賞式では英語で話している)。

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山野井さんの著書『垂直の記憶』

YouTubeの内容は、山野井さんに『山と渓谷』の荻原編集長がインタビューしている。詳細は割愛するが、パーティーが長かったせいか山野井さんは眠そうだった。

印象的だったのは、「どれが一番いい登山だったか?」というような質問に対して「全部」と答えていることだ。他の人ならいざ知らず、山野井さんがこう話すのはわかる気がする。すべての山、それがたとえ河原の岩を相手にしたボルダリングであっても、全力で楽しんでいる。

動画内でもフランスまで行ったのだから、ハイキングでもしたいとしきりに言っていた。

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私たちの多くは、「将来のために勉強しなさい」、「将来のために貯蓄しておきなさい」と言われ、人生の多くの時間を「将来のため」に費やしている。しかし、いつがその将来なのか、見えないままに人生を過ごしていることが往々にしてあるような気がする。

私は山野井さんの著書『垂直の記憶』を20歳の時に読んだ。それによってクライマーを目指そうとしたわけではないのだが、生きることへの考え方については少なからず影響を受けたと言える。

なぜ死ぬかもしれない登山を行うのか、なぜ危険なことをするのか。一般的には理解しにくいことだろう。しかし、道を歩いていても次の瞬間死ぬことだってあり得る。「生きている」ということは「死ぬかもしれない」ということと同義だということを忘れているだけなのだ。

そこで山野井さんが教えてくれたのは、ただ今を全力で楽しむこと。将来のために今を犠牲にしたり、過去を回顧するだけの時間は「今」という人生の原資をすり潰しているだけ。

山野井さんがすべての登山がよかったというのは、常に今のことしか考えていないからなのだ。

 

計画的に考えることは社会生活で必要な要素である。

しかし、私たちは今を生きているということを忘れてはいけない。