サラリーマンの必須科目というものがあるらしい。曰く、ゴルフ・麻雀・カラオケとのこと。
これで行くと私は見事に落第になる。
ゴルフは1度だけコースに出たのみ。麻雀経験は「ドンジャラ」くらいで、ルールもろくに知らない。カラオケも人前で披露できるようなものではない。
ただ、役員ともなるとゴルフに行って、夜は宴会で歌声を披露しなくてはならないようだ。大変なことである。
しかし、SDGsとかカーボンニュートラルとか口で言いつつ森を切り拓いたゴルフ場を使い、麻雀をしながらCO2をプカプカするのはいかがなものか。
ここで新時代に合わせたサラリーマンの必須科目を考えていきたい。
まずはスポーツ。
対戦形式の競技は難しい。テニスなんかは優雅で良さそうなものだが、本気の勝負となると角が立つ。嫌いな相手を前にすると、至近距離でスマッシュを放ったりしそう(私ならやりそう)。
ここはやはり個人競技の方がいいだろう。
マラソンなんかも人気だけど、社交性に欠ける。なにしろ走っている間は無言なのだ。あれは己との対話というスポーツである。
しかも実力によって3時間で終わる人もいれば7時間かかる人も出てしまい、競技中に全く触れあわない独りで参加するのと変わらなくなる。
諸条件を考慮すると、最適なのはボルダリングあたりがいい。ちょうどオリンピック競技になったばかりだし、始めるのにハードルが低い。ゴルフが何本もクラブを用意するのに対して、ボルダリングはシューズさえあればいいのだ。
「ブチョー!ガンバ、ガンバ!」
なんて言えるようになれば、会社の雰囲気も変わるかもしれない。
次、麻雀に代るもの。
囲碁・将棋というのが日本国内なら妥当なところ。実際、昭和の文化人は将棋や囲碁サロンでプロの指導を受けていた。川端康成や坂口安吾は囲碁好きである。
問題は麻雀と違って、実力差がモロに出ることだろう。
「社長とボクの実力差なら2枚落ちくらいですか」
などと言いにくい。ハンディキャップを付けるのはゴルフも一緒ながら、マッチ形式だとやはり気まずいだろう。
こうなると、日本での競技人口がやや少ないものを選んだ方がいい。国際的に盛んという意味ではチェスが最適だろう。
今やチェスソフトの方が人より圧倒的に強いので自習ことも可能。まずはポーンの動かし方から覚えよう。
難しいのがカラオケに代るものだ。
いっそのこと古典に戻って和歌を嗜むというのも手だが、日本以外では全く通じない。
芸術には各地の文化が深く反映している。それだけに普遍性がないので、世界に通用するものはなかなかない。
しかし、最も簡便なのは何かと言えばハーモニカがいいだろう。中にはハーモニカの音が嫌いだという人もいるかもしれないけど、下手なカラオケを聞くのとそう変わるまい。
何より軽くてどこにでも持って行けるし、安い。
これからのサラリーマンはボルダリングをして、夜はキャンプでチェスをしたり、ハーモニカを楽しむのだ。
そんな世の中が来たら面白い。というか面白いのは私だけかもしれない。