尾籠な話で恐縮だが、先日健康診断の前に検便をした。
専用キッドに入っている紙を便器の水の張っている上に被せて用を足し、ブツを水に落下させないようにしつつ検体を取る仕組みだ。よくできている。
私は1日1回決まった時間にしか出てこない体質で、早朝に出社して会社のトイレで用を足す。当然検査のチャンスはそのタイミングしかないわけで、専用キッドを手にトイレへと向かった。
便座に紙をセットし、無事用を足して一度立ち上がる。そして検査用のプラスチックのケースを手に取ろうとした瞬間、なんと自動で水が流れ、大切な検体は流れてしまった。
なんとも非情。
現代ハイテクトイレはこちらの都合など考慮せず「汚いもんは汚い」とばかりの対応である。
世界のトイレ事情の中で日本はかなり特殊だ。
マイケル・ブース『英国一家、日本を食べる』では、冒頭に訪日にあたっての心得として「日本のハイテクトイレをからかわない」とあった。初来日のイギリス人にとって日本のトイレはからかいの対象となるらしい。確かに当の日本人がその取扱いに翻弄されるのだ。妥当なツッコミかもしれない。
椎名誠『孫物語』ではアメリカ生まれの孫が「じいじのトイレにはモンスターがいる」と怯えていたそうだから、欧米人からしてみると「やり過ぎ」なのだろう。
一方で最近読んでいた本で、中国からの観光客が急増していた時期、ウォシュレットをいくつも「爆買い」していたということが載っていた。中国は今や世界の工場であり、ハイテクの粋たるiPhoneは中国産だというのに、トイレだけは日本がいいらしい。
ハイテク日本のハイテクトイレ。
今や日本はGDPで世界から遅れを取ろうとしているが、トイレだけはいつまで最先端を走るだろうか。