クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

疲れた時に読みたい本

ここ2年ほど4時半に起きて6時出社という生活が続いている。

そんなに始業の早い仕事なのかというと、そういうわけではなく定時は9時だ。最初はコロナ禍で時差出勤せよというお達しから始まったもので、徐々に電車の空いている時間を探していたら今の時間になった。

ところが始業が早ければ終業も早くなるかというとそうではなく、あれこれ仕事が降ってきて、結局会社に12時間以上とどまっていたりするのだ。何かが間違っている気がする。

そんな生活を続けていると時折疲れることもあるので、そんな時に読みたくなる本のご紹介をしておこう。

 

宮田珠己『ときどき意味もなくずんずん歩く』

表題作をはじめとしたエッセイ集。

解説でノンフィクション作家・高野秀行さんが「なんて面白い文を書く人だ」と感心したとあった。そう聞くとギャグ作家かという印象を受けるが、面白いのはネタではなく「文体」だったりする。

世に抱腹絶倒のエッセイは溢れている。面白いのはたいてい酷い目に遭った出来事で、要するに他人の不幸なのだ。宮田珠己さんも最初は自分が酷い目に遭ったり動揺したことを書いていたのだが、あっという間に書けなくなったという。そんなにしょっちゅう動揺するようなことは起きないし、起きては困る。

そんな中で生み出した笑える文体。これがなんとも疲れた時に心地いい。

 

野田知佑のんびり行こうぜ

またしても野田さんの本。アウトドア雑誌『BE-PAL』に亡くなる直前まで連載を続けたエッセイである。その中で本書は初期の1980年代の後半のものになる。

まだ野田さんが川に潜り、魚を捕まえ、焚き火で焼いてのんびり遊んでいる時期で、本人曰く「川を独り占め」していた時代のものだ。

この後、次々川はダムで潰され、水は濁ってしまう。日本の自然が最後に生きていた時代、のんびり遊べた最後の時代を堪能できる。

 

三浦しをん『のっけから失礼します』

宮田珠己のエッセイが文体でクスりとできるエッセイなら、こちらは抱腹絶倒系のエッセイ集だ。

小説家というのは普通の生態の人は少ないんじゃないかと思ってしまう。三浦しをんの場合、都内の実家近くで独り暮らしをしていて、漫画に埋もれて生活しているらしい。世にいう引きこもりと変わらない。

その人がどうやって種々の小説を生み出すのか不思議だ。

ただ、小説家には一般人に知られぬアンテナがあるのだろう。この本で面白かったのは新幹線で乗り合わせた政治家とSP。スーツをまとったいかついSPが身の安全というより甲斐甲斐しく働く(コーヒー買ってきたり、サンドイッチ買ってきたり、薬出したりする)様を活き活きと(?)と書いている。

いやはや疲れる世の中。

たまにはスマートフォンを離れてのんびり読書はいかがだろうか。