クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

高級フランス料理の夕べ

「最近なに食べた?」ということで、先々週末に珍しく、というか人生で初めてじゃないかとも思われる高級レストランで食事をした。

特に威張る話ではなく、券をもらったから行ったのだけど。

渋谷駅からほど近いところで、1階がレストラン、2階から上はマンションというところで、外観からは「高級」かは察せられない。恐る恐るというか、おっかなびっくり入り、フランス料理に白ワインを一杯付けて食事を堪能した。

写真は無関係

世界三大料理というとフランス・中華・トルコらしい。

この三大料理は宮廷料理から波及したものを指すらしいので、美食の権力者がいないと成立しない。中国やトルコは絶対的な皇帝がいた(そしてわがままな)点で共通している。

フランス料理ではナポレオン時代に食卓外交を担ったアントナン・カレームが、ナポレオン失脚後にウィーン会議で腕を振るい、フランスを救ったと言われる。フランスにとって食は重要な武器。「イギリスの舌はすべてフランスに行った」と言われるが、イギリス艦隊に立ち向かうのは勇敢なるフランス兵ではなくフランス料理なのである。

 

対して、昨今和食が世界的に人気という話はよく聞くが、日本人が食にこだわり始めたのはほんの100年程度に過ぎない。

戦前の日本人は貴賤を問わず米ばかり食べていた。脚気が日本人の国民病だった理由はヘルシー志向などではなく、「米好き」に起因しており、おかずの食味にこだわる風潮なんてなかった。

そもそも京都や奈良なんて内陸の動物性たんぱく質の乏しいエリアである。名物の京都の千枚漬けにしろ奈良漬にしろ元はただの大根や瓜であり、結局は「米が一番好き」という状態なのだ。

そう考えると和食文化は戦後の洋食化の産物であって古式ゆかしい伝統ではないのかもしれない。

 

話は戻って、渋谷でのフランス料理。前菜にテリーヌ。メインに鶏ステーキを頂戴した。

新鮮な魚介類のように脂や旨味の乗ったわかりやすい旨さではなく、1つの料理に複数の食感、味わいが用意されている。舌に載せればとにかく複雑で繊細な味が広がるのである。

ただ、私の貧乏舌ではどのくらい堪能できたかは定かではない。