クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

下降する身体との向き合い方

服部文祥北海道犬旅サバイバル』を読んでいる。

デビュー作『サバイバル登山家』で、イワナを咥え、ギラギラした目つきで写っていた姿から20年。身体能力が下降線に入り、身体的表現者としての「引退試合」として臨む旅として北海道の無銭サバイバル旅を選んでいる。

20代の頃、30代の先輩から「30になると大変なんだぞ!」と言われ、同じ先輩から10年後に「40になると大変なんだぞ!」と言われた。その先輩の出っ張った腹を思い出すと、服部さんなんぞは肉体的に遥かに若い気もするのだが、本人にとっては全盛期から下り落ちる感覚を複雑な感情で受け止めているのだろう。

年齢的な衰えをどう受け止めるか。それは人それぞれだろう。

「もう年だし」と言い放つ人もいるし、「まだこれなら若いのに負けない」と粋がる人もいる。私もまだ長距離走なら20歳の自分より速いと粋がっているし、経験と頭脳はまだ伸びるはずと信じている。

それが決定的に落ち始めた時にどう向き合うか。それはひいては「死」と向き合うことでもある。

服部さんは登山という身体表現で50歳までを生き、そこから次の数十年をどう生きるか、そしてどう死にゆくかを模索しながら北海道を旅している。

私もいつかそんな旅をするのかもしれない。