クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

自力の登山の楽しさ

先日は小淵沢駅から八ヶ岳権現岳に登った。

なんとなく、駅から登山というのはいい。バスと何が違うかと言うと難しいけど、「自力」で登った感じがする。バスと列車で何が違うかと言えば、バスには登山者のための路線があったりする。それに乗ると登山口まで連れて行ってもらえるわけだが、何か特別なサービスのようで自力感が薄れる。

それに対して登山者専用の列車というのはほとんどないから、鉄道旅と登山の組み合わせの方がなんとなくいい。

『単独行』や新田次郎の『孤高の人』で知られる加藤文太郎の時代の登山者はみんな駅から登山が定番だ。

槍ヶ岳に登るのに駅からと言うから想像を絶する。なんでも大糸線の方から麓をてくてく歩いて中房温泉を経由して燕岳、大天井岳を経て西鎌尾根から槍ヶ岳に行ったらしい。そこから穂高まで縦走して上高地下山となっている。

八ヶ岳もわれわれは権現岳だけで下山したが、加藤文太郎は普通に縦走して本沢温泉まで行っている。

もはや登山と言うより放浪か徘徊のようだ。

しかし、それが楽しいのだろう。

仕事から、時間から、利便性から離脱してただ山の中を生きている。ただ、歩く、食べる、寝る。

自力登山と言える旅をこれからもしたいと考える今日この頃である。