クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

スポーツ用品とアンバサダー

以前、ランニングシューズについて、私はアシックス派と書いた。まあそれは今でも変わりはなくアシックスのLYTRACERというモデルでその辺を走り回っている。しかし、ここのところマラソン界ではNIKEの厚底シューズがホットらしい。大迫傑日本記録で火が付き、世界大会も国内大会でもトップ選手がかなりの割合で履いている。先週のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)では30人中16人が履いていたそうだ。もはや過半数。こうなるといやが上にも興味が湧いてくる。「そんなトップランナーが履くものはオーバースペックではないか」と考えもするのだが、「これで速く走れるのなら」という色気も少し出てくるのだ。

かつて水泳でSPEEDO社の水着が世界記録を量産し、道具の進化で出した記録に価値はないという議論になった。特に「走る」とか「泳ぐ」という競技はシンプルに身体能力が問われる部分が大きいのでそういった議論になりやすい。ただ、開発するメーカーだって少しでも記録が出るような仕様に改良を加えているのだから、道具の進化を否定されてしまっては存在意義がなくなってしまうだろう。

 

しかしながら、私はそんな小難しい議論をしたいわけではない。

スポーツ用品を選ぶ時に「〇〇が愛用!」なんていうキャッチをよく見聞きする。自分はそんなレベルでは到底ないくせにそう聞くと気になる。特にカタログでスペックを比較したりするのが好きな人間は、スペックの他に誰が使用しているのか、監修しているのかもわりと気になったりする。

山の友人(男性)と話をしていた時、

「同じくらいのスペックの製品があったときに、スティーブ・ハウスが使用なんていうことが書いてあるとついつい買ってしまうんですよねぇ」

と言われ、「うんうん、わかります」と即座に答えたのは私で、「えー!全然そんなことない」と言ったのは女性の山仲間だった。この手の傾向は男性に多い(気がする)。女性は色とデザインとか自分に合っているかとかに気を配っていて、有名人使用というキャッチには案外ドライな気がする。

 

かつてマイケル・ジョーダンの影響でエアマックスというシューズが大人気になった。中学校や高校で盗難まで相次いで社会問題とまで言われた。ただ、あれを履いたからといって、ジョーダンになれないことは誰もがわかっている。それでも履きたくなる人がいるらしい。

ちなみに先に挙げたスティーブ・ハウスはアメリカのクライマーで、2005年のナンガパルバッド・ルパール壁完登は今でも最高のアルパイスタイルによる登山として挙げられる。そんな人と私たちなどは比べるべくもないのは重々承知の上で彼のプレゼンする製品となると「なになに」と見入ってしまうのだ。

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スティーブ・ハウス監修のアセンジョニスト45

 

件のNIKEのランニングシューズであるが、メーカー希望小売価格は税別27500円となっている。20000円後半って3シーズン用登山靴並みだ。しかもそんな高級な靴はレースの時にしか履くことができない(もったいなくて)。トップ選手でもフルマラソン出場は年3回くらいだと聞く。3回のために27000円?しかし、このシューズはもはや話題沸騰となっていて日本国内では在庫切れで入荷待ちとなっている。

「ふざけちゃいけない!走るのは自分だ。北島康介だって『泳ぐのは俺だ』というTシャツを着ていたではないか」

と意地を張りたい一方で、ここのところ

「使えるものは使おう。アミノ酸もサポートタイツも役に立つなら使って記録を出そう」

という柔軟な姿勢になっている。

 

先日、小川町のスポーツ用品店に行ったらアシックスのターサージールなら10000円を切る値段でも買えるようだ。ただ、「日本記録を出したシューズ」という謳い文句に思わず心揺れる今日この頃なのである。