クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

海彦と山彦〜北海道メシの恍惚 その3 海の幸、山の幸

北海道に行く目的は当初、山登りだった。旭岳からトムラウシ縦走を企図したものの、天候不安定で断念。山に行くと食事がとにかく貧しくなるので、今度はメシの美味そうな海に近い山ということで利尻島を選んだ。

それもこれも海から獲れる美味いものを食べるためである。

 

④ホッケのちゃんちゃん焼き

利尻島の後は礼文島に行った。

船が着くやいきなりの大雨に見舞われ、とにかく昼食に炉端焼きの店に入る。この店はホッケのちゃんちゃん焼きが有名なようだった。

 

相席で4人で1席。4人ともホッケを頼んだ。

下が4人前、4匹が並んだ図である。

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ちゃんちゃん焼きは鮭が有名で、味噌と野菜でワシワシ食べるのだと聞く。

網焼きでちゃんちゃん焼きとはいかなることぞと思ったら、ホッケの皮を鍋代わりに火で炙る。身は東京の居酒屋で見るような干物ではなく、みずみずしい生だ。しばらくすると、脂が身に浮き出し、尻尾の方から香ばしい香りが漂ってきた。

 

お店の若い主人が食べるタイミングを告げたら箸で焼けてそうなところからついばむ。

上品な脂の香り。干物のホッケにある臭みは全くなく、甘めの味噌、ネギがマッチする。ひゃひゃひゃと変な声が出てくる。

サンマは目黒ではなく北海道である。ホッケも間違いなく北海道で食うに限る。

東京ではもう食べられない。

 

⑤ヤマメの天ぷら

利尻・礼文の後は小樽でまたしても海鮮を食べた。北海道は海の幸だという確信を持っていたのだが、小樽から羊蹄山に向かってそのあたりは考え直すことになる。

 

羊蹄山の麓には半月湖という湖があって、そのあたりに野営できる場所もある。

とは言っても管理人もおらず、トイレと水道のみという簡便な施設のみで、展望もない。私たちが行った日は、小学生の男の子と母親、一人旅のおじさま、おばさま、若者2人組などが派手に騒ぐこともなくそれぞれ細々とキャンプをしていた。

 

こういう時こそ見知らぬ人との会話が広がる。

一人旅の女性が

「これ私が釣ったものですけど、よければどうぞ!」

と差し出した。ヤマメの天ぷらだと言う。釣ってキャンプをして、焚火台を使って火をおこし、天ぷらにしている。

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ヤマメは10cm前後で小ぶりと言えたが、噛むと臭みは全くなく、骨までサクサクしてかなり美味い。ワタを釣ってすぐに取って身を洗うと臭みがなくなるらしい。

「ひゃー!美味しい。どこで釣ったんですか!?」

私が感嘆の声を上げると

「ふふっ、この近くで」

と少し言葉を濁した。さすがに釣り場は明かしにくいようだ。

われわれが登山をやると言うと、「すごいですね!」としきりに話すものの、私たちからすれば釣りをして天ぷらにする方がすごい。

やがてなぜか母子でキャンプをしている家族と北海道を一人旅するおじいさん方2名との酒宴となった。ヤマメ釣りの女性は、20歳の娘もいるらしく、もう50手前と言っているが、かなり若い感じがした。山彦になると若返るのかもしれない。

 

海の幸を求めた北の旅の終盤に、山の魚、山の幸を頂戴できるとは思わなかった。

海彦と山彦だとどちらがいいだろう。母子キャンプをしているお母さんは春に山菜や秋はキノコ採りをやるらしい。

昨日まで海産物を堪能していたものの、日本の山の幸も捨てたものではないと感じながらその日は眠りについた。