今年の明るい話題は藤井聡太二冠くらいだろう。将棋に興味がなければさっぱりわからんだろうが。
最年少でプロ四段デビューしてから、朝日杯で全棋士参加棋戦の最年少優勝。今年はついに最年少でタイトル獲得(棋聖)し、続いて王位獲得で最年少二冠に。
最年少の記録はほとんど塗り替えるのではないかという勢い。
「Number MVP賞」に選ばれるって、まあオリンピックもなくなり、他のプロスポーツも盛り上がらなかったしね。
一方で最年長記録は、加藤一二三九段が77歳まで現役を続けた。
トップを維持したという意味では大山康晴十五世名人で、亡くなった69歳までA級。最年長タイトル挑戦は66歳。最年長タイトル獲得は56歳となっている。
将棋もアスリート並みに過酷な世界であり、30代や40代で引退というのも珍しくない。
将棋の自力もさることながら、研究する根気や10時間以上戦う体力が必要となる。77歳で現役というのはこれから更新されるだろうか。
登山にも最年少がある。
しかしながら、必ず取り上げられるのは「最年少で七大陸最高峰に登頂」というもので、これは極めて「微妙な」記録である。微妙なというか怪しいと言っていい。
何が怪しいのかと言えば、年齢詐称とかの話ではなく、最年少で達成するには体力より経済力が問われるからである。
アフリカ・キリマンジャロはガイドを雇うかどうかという問題くらいで、さほどのことはない。あとは高山病対策のみ。アコンカグアは天候の選び方。オセアニアのカルステンツが政治的に面倒な地域にあるそうだが、代わりにオーストラリアのコジオスコを選べば日本の雲取山くらいの標高で済む。
問題は南極ビンソンマシフとエヴェレストで、これが金と時間のかかるところである。
「最年少で七大陸最高峰に登頂」を最初に掲げたのは日本では野口健さんだろうか。ただ、彼がすごいのはこの冠を「利用させてもらった」と明言していることにある。これは、「マスコミには商品価値はあるけど、アスリートとしてこのタイトルは意味がない」と言っている。
やりたいこと(エヴェレストに登る)には金がかかる。金を集めるために「最年少」をキャッチコピーに使うというのは合理的発想である。
日本人ではその後、石川直樹さんが23歳で達成し、一躍有名になったが、今や最年少はなんと15歳である。しかもエヴェレスト挑戦に年齢制限が付いたので、これから先は更新不可能。
すごいけど意味を持たない、やっても世界ナンバーワンにならないタイトルになってしまった。
同じく最年長も怪しい記録となってしまった。
2008年に三浦雄一郎さんが75歳でエヴェレスト登頂。ただその前に76歳のネパール人男性が登頂していたので記録達成ならず。でもそのネパール人男性には正確な戸籍がないので真相は藪の中。
2013年に80歳でエヴェレスト登頂。しかし、キャンプ2で下山を断念してベースキャンプまではヘリで下山。半分遭難ではないかという意見もある。
エヴェレストでこれだから他の山の最高齢記録なんかは話題にも上がらない。
登山に最年少とか最年長の記録を付けるのは難しい。
山ではスゲー体力のおじいさんとかいっぱいいて唖然とすることがある。プロスポーツ選手並みの超人とわりと頻繁に出会うので、スポーツの世界の最年少や最年長の価値なんてどうでもよくなる。
結局は「こんな人になりたい!」と思えるような魅力を持っていれば、年齢のカウントなんか関係ないと思うのだが。