緊急事態宣言、蔓延防止措置。去年はひたすらに自粛ムードだったのが、1年を経て耐えられなくなったのだろう。今日も電車は満員だった。
今年のコロナ対策はひたすら飲酒に向かった感がある。コロナに対する人々の恐怖心が薄れ、官の言うことを聞かなくなったところで、「酒」をターゲットにしているようだ。
そんな暗い話はさておき。
酒飲みの私はここのところ家飲みばかりなのだが、外で飲む酒はそれはそれはうまい。山の絶景を見ながらなら、普段の半分の量で倍おいしい。
そんな山で飲む酒、特にビールについて考察してみたい。
山でビールを初めて飲んだのは冬の八ヶ岳。
山で出会って意気投合した友人と硫黄岳に登った時で、それまで山ではストイックに禁酒を貫いてきたのに、「まずは1杯ですね」と言われてあっさりポリシーを捨ててしまった。
赤岳鉱泉で飲んだビールを皮切りに、自制心がなくなった。
「山でビール飲んでいいんだ。それが大人なんだ」
となったわけである。
翌年の9月、早月尾根から剱岳に登った。
この時のメンバーは、先の友人(男)と女友達。酒飲みがそろったので、早月小屋でプシュッ。
2日目に剱岳に登頂。剱沢小屋でプシュッ。
3日目は室堂で風呂に入り、黒部アルペンルートで黒四ダムにてさらにプシュッ。信濃大町駅からあずさ号に乗りこんで最後のプシュッ。
終始飲みっぱなし。疲れているので、1回につき缶ビール1本という健全(?)な飲んだくれ登山ができた。
とにかく過度に飲まないことが重要である。
山好きに悪い人はいないという。これは音楽好き、自転車好き、将棋好きなどなんでも当てはまっていて、というか同好の者とはとにかく仲がいいのだ。
そういう同好の士からビールを奢ってもらったりしたらまたうまい。
今から6年ほど前、熊野古道の小辺路に行った。熊野古道は鬱蒼とした森や固い石畳、集落内を歩くので、展望はないし、楽しいかは微妙なところ。
その途中で、小屋があり、おばあさんが作業をしている。
「コーヒー飲むか?」
と通りがかりの私は訊かれた。80kmを2日半で踏破する予定だったので、時間はタイトだったものの、好意は受けるべきかと思って小屋に招き入れられた。
謎のおばあさんは、その小屋を自力で建てて、そこを熊野古道を行くハイカーに無料で開放している。幼き日から山の中の家に住んでいたから、とんでもなく足腰が強いらしい。小屋の材木、鉄製ストーブは人力で担いで来たという。
おばあさんの話をひとしきり聞き、そろそろお暇と思ったら、おばあさんが言った。
「ビール持って行くか?」
軽量化のため、38Lパックにツエルト泊。酒は控えていたところで、思わぬプレゼントをありがたく頂戴した。おばあさんの好意のビールはその晩、ツエルトビバークでおいしくいただいた。
展望のないテント場だったが、好意の味がした。
山でのビールについて書き出したらキリがないので、まあ今回はこれくらいで。
梅雨が明けたら、展望が良くて、風が気持ちいい山にビールを持って行きたい。