クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

山男・山女の元気の源は...

休日出勤をすると空がやけに青く見える。

天気がいいのに出かけられずとにかく悔しい。そんな時は次の休みや長期休暇になにをするかを考えて心を慰めている。

f:id:yachanman:20211103082615j:plain

これは以前ブルーインパルスが飛んでいたのを撮ったもの

「なぜ山に登るのか?」

これはジョージ・マロリーでなくとも山男・山女なら必ず聞かれる質問だ。

"Because it is there."(そこにあるからさ)

とマロリーは答えたものの、未踏の世界最高峰があれば登ってみたいというのは人間の性である。命を失う可能性があるとなって初めて登る人と登らない人が分かれるだけで、マロリーに対する記者の質問は愚問と言っていい。

私も御嶽山の噴火があった後に似たようなことを訊かれた。しかし、噴火があるなんて誰も予想しながら登ったりはしない。山で噴火に巻き込まれて亡くなるのは交通事故より少ないだろう。これまた少々的外れな質問だ。

私の好きな山は甲斐駒ヶ岳だが、命を賭けては登っていない。できる限り命を賭けないようにトレーニングをしている。それでもなぜ登るかと言えば、その日しか見れない景色があるかもしれないから。

ピーカンの天気もいいけど、雲が流れるのも場合によってはよかったりする。こうなるとたとえ外れの天気でも行かざるを得ないのだ。

f:id:yachanman:20211103091422j:plain

夏の赤石岳

山野井泰史さんはマカルー西壁やジャヌー北壁をソロで登れるなら命に替えてもと書いていた。最高峰などのわかりやすい指標がなくなった現代にそのような山があるのは幸せなことかもしれない。

しかし、登り切った頂上が最も幸せかと言えばそうでもないこともある。棋士升田幸三は「たどり来て未だ山麓」という明言を残したが、人生が未だ途上にあることを感じる時の方が私は好きだ。そしてこの途上にある瞬間瞬間を楽しむことができれば言うことはない。

目標を決めて努力し、達成することがやたらに賞賛される世の中だが、その途上を楽しまなくては何のための人生かわかったものではない。

 

山男・山女は、唯一無二のこの瞬間を自分は生きているということを確かめるために今日も登っている。