クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

下戸と酒飲みの幸福

会社で昼食を食べていると後輩がしんどそうな顔をして横で食べていた。なんでも昨日、役員に誘われて飲みに行き、日本酒をしこたま飲んだらしい。4人の面子の中で飲めるのはそれほどいないのに、4合瓶を3本も用意したらしい。こうなると読み干すまで帰れないということで、「頑張って」飲む羽目になったという。

私は酒飲みではあるものの、頑張って飲むのは嫌なので心より同情した。

肴に鰹のたたきが合うと言って飲まされたらしい

先日亡くなった野田知佑さんは酒飲みだった。

遊び仲間の椎名誠があんなに強い人は見たことがないと言っていたから本当にすごかったのだろう。相方は川の学校で朝からビールを飲んでいたと証言している。

そんな酒好きの野田さんなのだが、街では全く飲まなかったのだという。焚火の前で飲む酒に比べたら都会の居酒屋やバーで飲むのがバカバカしくなるようだ。

なるほど真の酒飲みは飲む環境が大切なのである。

囲炉裏端の一杯なんかいいかもしれない

酒を飲めない人を下戸という。

語源は律令制の中で最低課税の世帯を指すらしい。ずいぶんと歴史ある用語である。

世間では飲めた方がいいという考えが一般的だ。飲み過ぎると経済的にはよろしくないものの、飲んで気持ち悪くなるのも考えモノ。飲めるけど飲まないのが最もいい。

私の家系は上戸というほどではないが、そこそこ酒飲みが揃っている。兄弟の中では私が一番の酒飲みで、あとは飲めるけど飲まない口だ。むしろ甘い物好きだ。

弟は姉の親族顔合わせという席で1人パフェを注文し、長いスプーンでアイスをつつきながら自分の好きな話をする自由人である。酒飲みは飲めば傍若無人。普段は普通の人というのが多いが、甘い物好きはそういう区別はない。飲める環境の限られる酒と違う幸福がある。

 

現代は酒も甘い物も避けられる傾向にある。酒豪自慢もあまり聞かないし、糖質オフの商品ばかりが並ぶ。

飲んで醜態をさらさないように、太って醜い身体にならないように。そればかりを気にする世の中になっている。

「タガが外れる」という言葉があるが、「タガ」を付けたまま生きるのが現代社会となっているようだ。