クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

山とビールと私

北八ヶ岳は楽しかった。ただ、キャンプにやや物足りなかった。

その翌週、相方の両親と奈良で夜食事をしたら、最初から日本酒になった。私の実家と違って、それほど酒飲みでもないから、最初からメインの酒を頼むのだろう。

奈良の大和酒造の酒はすっかりして美味かったが、何か足りない気がした。

 

「何か」とは。それはビールだ。私は「とりあえず」ビール派である。

「とりあえずビール!」はビールに失礼だという意見もあろう。言い直す。「とにかくビール!」である。

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山では「とにかくビール」だ。

そう感じたのは5年ほど前のお盆に富山・室堂から岐阜・新穂高温泉まで縦走した時のこと。

軽量化のため酒は360mlペットボトルにウィスキーを持参した。室堂から初日は薬師岳方面に南下。五色ヶ原のテント場に着く。

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五色ヶ原のテント場



 

赤牛岳がどーんと見える五色ヶ原は展望抜群。静かでのんびりした空気の流れるこの景色を見るや、

「あー!ビールが飲みたい!ビールが飲みたい!」

と衝動が走った。

テント場から小屋までは少し距離があったものの、ビールを買いに走り、赤牛岳を眺めながらビールを一口飲む。結局、ウィスキーは次の日まで口をつけなかった。

 

ビールは山小屋ではレギュラー缶で500円が相場。街中なら200円くらいか。

ビールの売上が上がると、山小屋は「さぞ儲かっているでしょう」と考える。素人考えはそうなのだが、現実はそうならないらしい。

ビールの原価はビール本体に加えて、ヘリによる輸送費。輸送費は重さに比例する。ビールはレギュラー缶で350mlで、350gくらいはある。

これは他の物資より量の割に重いので、輸送費コストは跳ね上がる要因になる。聞いた話ではビールは山小屋にとってほぼ儲けにならないらしい。

 

冒頭の写真は5月に木曽駒ヶ岳に登り、下山してから駒ヶ根ソースかつ丼とともに頂戴した駒ヶ根ビールである。一仕事した(仕事じゃないけど)後のビールは美味いし、クラフトビールならよりいい。

結局、北八ヶ岳の日も、奈良の夜もビールを後から飲んだ(ただし北八ヶ岳の時は翌日下山してから)。後出しジャンケンならぬ後出しビール。

しかし、街中で飲むより山で絶景を見ながらのビールに勝るものはない。これが山仲間との一致した意見である。