随分前にラジオで百田尚樹がこんなこと言っていた。
「俺はきれいなおねえちゃんに振り回されてきた。『きれい』って何なんやろということでこの本を書いたんです」
この本というのは美容整形をテーマにした『モンスター』という小説だという。
人の一生を狂わせるものというのはいろいろある。私はその点でいくと「お金」というものが時折不思議でならなくなる。人を振り回し、狂わせ、時に救いを与える。
いったいお金とは何だろう?
いろいろ本を読む中で野口悠紀雄『マネーの魔術史』というものがあった。経済学者によるマネーにまつわる物語が描かれている。
その中で「お金」にまつわる原理原則というものがあった。「お金というものはそれそのものに価値はない。人々が信用してはじめて価値が生まれる」というものだ。
歴史を紐解くとお金が信用を失うことはごまんとある。
有名なのは第一次世界大戦後のドイツ。インフレが加速しコーヒー1杯を飲むにはトランク1杯分の札束が必要という事態になった。さる男が1杯飲んだ後、コーヒーをさらにもう1杯ほしいと注文すると店から「ただいまよりコーヒー1杯はトランク2杯分となりました」と告げられたという。最初のコーヒーを飲む間に2倍のインフレになったのだ。
こうなるとお金は信用できなくなる。今の1万円札も原価は2円だというから、信用を失うと文字通りの紙切れとなるわけだ。それを「壱萬円」として信用するも信用しないも人次第。
これはある種の宗教に似ている。しかし、宗教だとすると三大宗教より古い最古のものだろう。これほど長きにわたって信じられているものはない。
これこそお金の魔力である。その魔力に囚われ多くの人が振り回されたのだ。
これまでもお金についてはいろいろ書き散らかしたが、再びお金について考察してみたい。