スピッツの「運命の人」という歌にこんな歌詞がある。
愛はコンビニでも買えるけれどもう少し探そうよ
不思議な言葉だと思う。草野さんの透明感のある声でさらっと聞き流してしまうが、何を言わんとしているか考えてしまう。
一方でThe Beatlesには"Can't Buy Me Love"(ぼくの愛は買えない)という歌がある。これは当然という気もするが、愛以外はお金で買えるということも意味している。
実際の問題として結婚に際して重視するポイントというアンケートを取ると1位は「経済力」なのだそうだ。結婚がすなわち愛でない。ただ、愛とお金はセットで機能することを示している。
よく有名女優がベンチャー企業の社長と結婚なんていう報道を聞いたりする。なんだかお金で愛を買ったように聞こえるが、本人たちはそういうつもりはないだろう。
しかしながら、経済力あってこその結婚であったことは否定しがたい。有名女優ともなれば本人の稼ぎも相当なものだ。それに対して夫が常に節約を気にして、電気の消し忘れやスーパーの特売を気にするようでは家庭生活もギクシャクしかねない。
経済力と様々な価値観はリンクするから、愛は買えるかはともかく「相性」はお金と深くつながっていると言える。逆に言うとお金は愛の絶対条件でなくとも必要条件なのだ。
夏目漱石『吾輩は猫である』の中で、苦沙弥先生の細君と姪(雪江さん)が言い合うシーンがある。
「それじゃ雪江さんなんぞはそのかたのように御化粧をすれば金田さんの倍くらい美しくなるでしょう」
「あらいやだ。よくってよ。知らないわ。だけど、あの
「つくり過ぎても御金のある方がいいじゃありませんか」
「それもそうだけれども――あの
お金はあった方がいいという細君に対して、まだ若い姪の方は金の力に頼むことに生理的な嫌悪感があるようだ。
このような議論は明治の世も今も変わらないのかもしれない。