クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

若いころにお金のある不幸、お金のない不幸

相方の古い知り合いに「寅さん」という人がいる。寅さんは本名ではなく、「男はつらいよ」のフーテンの寅に似ていることからのニックネームだが、もはや私は本名を知らない。その寅さんの言葉に

「若いころに金があるのと年を取ってから金がないのは不幸だ」

というのがある。

確かに蓋し名言という感じがする。作家の原田宗典も若いころは貧乏だったけど、ものともしない気力と体力があった。40歳のぼくが貧乏だったら心から貧乏を憎んでいただろうと書いている。

日本の年功序列社会では若くて金のある人は稀だ。金がないけど体力があるというのが当たり前なので、若さを嫉まれても恨まれることはない。

金がないのが当たり前なので、私も自転車旅行やバックパック旅行でいろいろ年配者から奢ってもらった。北海道ではうに丼、徳島では川魚定食を食べれたのは偏に若かったからだ。これが今ならそうはいかない。

まあ、30超えてからもバックパックを背負っていたら学生と間違われて、車に乗っけてもらったことはあるのだが。

一方で、若いからといって完全に貧困というのも困る。

山に行った帰りの高速バスで年配の女性と隣り合わせで座ったことがある。その女性は娘2人と旅行に来た帰りだという。話しているうちに盛り上がって話はいろいろなところに及んだ。

彼女が言うには「若いころに海外、特に遠いところに行っておいたほうがいい」という。ヨーロッパなんかは若いと物価が高いので敬遠しがちだが、年を取ってからでは体力が持たない。何より飛行時間が長すぎるのだという。

確かに体力がないと遊べない。やりたいことは金と体力の両方があってできる。

私も29歳の時に雪山登山を始めたが、楽しいことを見つける度に「もっと早く始めればよかった」と思うのが常だ。雪山は時に金がかかるので登山を始めたころは敬遠していたのだ。

若いころに小金があるのはそれなりの幸運なのである。

 

最初の寅さんの名言に戻ると、「若いころに金があって、年を取って金がなくなると不幸だ」ということになるだろう。

ずっと金がないとそれなりに慣れてしまうが、途中で金があると不幸が際立ってしまう。ただ、若いうちに金を貯めることに終始してもそれが将来の幸せにつながるとは限らない。

難しいジレンマだが、金のある範囲でできるだけ今を楽しみ続けるしかないと思っている。