確か就職したての頃、社内では役職ではなく名前で呼称しようという運動があった。「あった」というのはどこかで雲散霧消してしまったからだ。そんな運動があっても役職を付けて呼ばなければ機嫌の悪くなる人もいて、なかなか面倒だった。そのうち誰も言わなくなったので呼称は人それぞれとなった。
最終的に私は役職を付けて呼ぶ人と名前で呼ぶ人を分けている。決してその違いを本人には言わないがその秘密を告白しようと思う。
私は人間的に尊敬できる人は名前、そうでない人は役職で呼んでいる。
普通逆ではないかと思う。日本人は古来から高貴な人を名前で呼ぶのは失礼として尊称で呼ぶ習慣がある。
現代において高貴な尊称とは何だろうか。社長も理事も首相もただの一過性の役職である。辞めたらただの人だ。
野口健さんが幼少期に父親に「自分の名前が肩書になる生き方をしろ」と言われたそうだ。いい言葉である。
私が尊敬できる人を名前で呼称するのは、その役職を辞めても付き合いたいからである。裏を返せば役職で呼ぶのは役職がなければ誰がお前なんかと口を利くか、というわけだ。
我ながら意地が悪いなと思う。