クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

川の景色

今年の夏は暑い。毎年のようにそう言っている気がする。このままだと、かつての温帯が亜熱帯で、亜熱帯は熱帯になり、熱帯は「猛熱帯」とかの新しい名前が必要になるかもしれない。


とにかく暑いので、実家から奈良県南部へ避暑に出かけた。行ったのは洞川という川(奈良県天川村)で、河原には心地よい風が吹いている。

昼近くになると人が多くなって

きた。「みたらい渓谷」にはさほど大きな滝や流れはなく、川遊びにちょうど良い。

子どもは案外控えめに浅瀬で遊んでいるが、お父さんは岩から淵にダイブしたりとはしゃいでいる。巨大な犬を連れた家族もいて、犬も日差しが暑いのか、身体を流れに浸しては起き上がり、また浸しては起き上がりを繰り返していた。

川で遊ぶ風景は良いものだ。プールと違って芋洗い状態にならないし、何より水が常に冷たく、清冽である。人工物にはないちょっとした危険も良い。私は裸足で歩いて、岩のぬめりで滑り、大転倒してずぶ濡れになった。

それもまた良しなのだ。

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少し下流の集落で昼食を食べた。

こんな所にまで来て中華料理屋に入ろうとする父親を制止して川魚料理を出す店に入る。

アユ定食とアマゴ定食を頼んだ。私の頼んだアマゴは川魚と思えないくらい脂が乗っていて美味い。

他の小鉢も意外と言っては失礼だが、手が込んでいて美味かった。何より川を眺めながら食べるのが良い。川を全ていただくという感じがする。

帰りに橋から川を眺めると大きなニジマスがたくさん群れていた。

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私の実家は大和川の上流で、小さな川の岸は全てコンクリートブロックに覆われている。幼少時代の大和川は日本一汚い川に認定されており、常にアブクを浮かべていた。こうなると「川を大切に」という看板も小学校教師の「川にゴミを捨ててはいけません」という言葉も空虚で、私たちは「これで一級河川かよ!」と吐き捨ていた。

洞川に行った翌日は墓参りに行き、その川の横を歩いて帰ったのだが、以前よりはましになっていて、川底には放流したらしいニゴイがうようよしている。ゴミも目につくほどはない。美しくはないが醜さは少し減っている。

しかしなぁ。しかし川の育む魚が人の中に入るくらいになるまでどれくらいかかるだろう。


カヌーイスト・野田知佑さんがテレビ番組の最後に言っていた言葉が私の心に響いている。

「『ふるさと』というのはすなわち川なんだよね。つまり川が汚れているというのはふるさとが汚れているわけで、ふるさとがダメになっているわけなんだ」