クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

お城スコープ

先日、高知龍馬マラソンのついでに高知城へ寄った。マラソンの直後なので足が痛い。先々月はやはりマラソンで爪がはがれ、先月は山で凍傷になり、今回大きな怪我はないものの、忙しい身体だ。

高知城高知県庁のすぐ裏にある。市中を見下ろす高台で、まさに一等地で、高知滞在の最終日は最も天気が良く、青空がのぞいていた。

 

これまで気が付かないうちに城にはずいぶん行っている。知らない町を観光するのにまず手ごろだ。そんな観光旅行の中で印象に残っている日本の城を紹介したい。

 

1.犬山城

8年ほど前に思い付きで名古屋へ行った。単に「名古屋って行ったことがない」というくらいの理由だったのでさしあたっての目的地はない。仕方がないので、名古屋から熱田神宮へ走り(自分の脚で)、そこから桶狭間古戦場に行った。テーマは織田信長である。午前中で「桶狭間の戦い 」は終わってしまったので、今度は電車に乗って犬山を目指した。

 

犬山城織田信長の叔父・信康が砦を改修して築いた城である。その後、豊臣時代にさらに改修されて現在の姿になった。木曾川の畔の丘に建っていて、河原から見ると美しい天守閣だ。

風光明媚なこともさることながら、この城が復元ではないこと、そして実戦で使われているところがいい。機能美というのだろうか。木曾川方面は断崖で、反対の城下町側は開けているものの、天守閣に至るまでは右へ左へ道が曲がりくねり、いかにも敵を迎撃するという雰囲気である。

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川沿いに立つ犬山城


 

 

2.熊本城

関西で城と言えばやはり大坂城。城の主要な部分は再建だし、石垣も建造当時の豊臣時代ではなく、江戸時代に入ってからものではあるが、やはり名城たる所以はその規模と実力にある。規模は今でも大阪城公園が2km四方くらいの面積を誇っている。しかし、当時はさらに外側に防衛線があった。

大坂城の南に真田山公園というところがある。中には野球場、テニス場などがあり、緑の少ない大阪にあっては珍しいエリアだ。真田山の名称の通り、有名な真田信繫(幸村)の「真田丸」は公園からすぐの大阪明星学園あたりにあったとされる。ここは大坂城の南端からさらに2kmも離れたところで、そこが大阪冬の陣の際の最前線となっていた。当時の大坂の町は巨大な城塞都市だったと言える。

 

思わず力が入って大坂城の話を長々したけど、熊本城である。

 熊本城の初代城主は豊臣秀吉の子飼いである加藤清正で、熊本では治水などの行政も含めてすべて清正公がやったことになっている。このあたりは山梨における武田信玄と似ている。

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熊本城は豊臣秀吉による九州征伐もすっかり落ち着いた頃で、実戦には使われなかった。それでも城攻め、築城の名手、秀吉の弟子としての本領を発揮した石垣は見ごたえがある。石造りの街に迷い込んだような感覚になる。攻め入っても、たちまち石垣に包み込まれて、どこからともなく降り注ぐ矢や弾で討ち取られるのは必至だ。

 

熊本城が築城された後は加藤氏から細川氏に城主が変わったりはするものの、天下泰平の時代が続く。したがって歴史の遺物として実戦で使われることもないかに見えた明治になって急遽重要な役割を担うことになる。

鹿児島で蜂起した西郷隆盛の軍勢に対し、政府軍が立てこもったのが熊本城だった。わずかな軍勢で薩摩隼人を迎え討つことになった政府軍は籠城するしかない。籠城側は攻め手の3分の1未満で、士気もさほど高いわけではないのだが、そこを撃退したのは熊本城である。西郷隆盛は政府軍ではなく加藤清正に破れたと語ったという。

熊本城は200年の時を経て本領を発揮した。

 

 

3.??城

さて、高知城はどうだったか。わざわざ高知まで行ったからには三枠目に入れるのかというと、すっぱり外すのである。高知城山内一豊関ヶ原後に長曾我部氏に代わって土佐に入り、築城したもので、以降幕末の山内容堂の時代まで支配は続く。つまりこの城は山内家の象徴ではあっても戦闘に使われてはおらず、石垣もいわば飾りである。

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姫路城や彦根城松本城も現存する名城として名高い。しかし、天下泰平の時代に造られたという意味では殿様の余興と言えなくはない。結果的とはいえ、時代に迫られた建造でない。松本城北アルプスのコラボは山屋としてはなかなかの絵なのだが。

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それでは第三の城に何を選ぶか。岩殿山城大月駅から見える高台にあって武田勝頼の最期とも相まって神妙な気持ちになる。雲海で有名な竹田城にも行ってみたいし、丸亀城の石垣も立派だと聞く。

もう一つの城を探しにまた旅に出たい。