クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

厳冬期・手袋再考

年明け早々に凍傷になってしまった。

八ヶ岳へ行き、当初は阿弥陀岳北稜を目指したものの、深雪で断念。一般ルートからの赤岳に転進するとやけに寒い。指が痛いので、懐に時々入れながら歩いていたが、下山しても指先が冷たいままだった。この時は防寒テムレスという冷凍庫作業用の手袋と夏にも使っているトレッキング用手袋の組み合わせ。前日が妙に暖かかったので油断したのが原因だ。

 

1週間を経ても右手の中指と薬指、左手の中指と薬指、人差し指が痺れていて、中でも右手の中指がやや変色していて、キーボードを打つにも不便している。指全体が変色したり、水泡ができたりはしていないものの、これ以上酷ければそれに近い状態になっただろう。

以前、手袋についての記事を書いたが、もはや失格だ。ここは謙虚に手袋について考え直す必要がある。

 

yachanman.hatenablog.com

 

 今は凍傷になっといて何を偉そうにという感じだ。とにかく再考しなくてはならない。

 今まで使っていた1番分厚い手袋はブラックダイヤモンドで、インサレーションにプリマロフトという化繊が使われていて、手のひらはレザー。暖かいといえば暖かいのだが、人差し指が中指以下の指と分かれている。この手袋の場合、行動を開始してから、身体、二の腕、肘の順に温まり、手の甲から指先に温かい血が通う。中指から薬指、小指にグワーンと温かさが伝わり、親指、最後に人差し指に行く。

私のような冷え症は大変で、少なくとも30分は動かなくてはならないし、一度温まっても身体を止めて息を整えたり、クランポンの紐を締めていると、人差し指からグワーンと冷えてしまう。


そこで、今回はミトンにすることにした。人差し指だけ特別に頑丈にならないことには危ない。そして、中綿は未脱脂ウールに。この組み合わせは山岳ガイドの方の意見を参考に。

写真で撮るとこんな感じだ。

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アウターはヘリテイジのゴアウィンドストッパー。完全防水ではないので、水に浸けたりしたらまずいけど、最近はミトンのオーバーグローブそのものがほとんどない。私が探した中ではMt.スポーツ石井に1種類、カモシカスポーツに1種類(ヘリテイジはカモシカスポーツのオリジナルブランド)で、バリエーション豊富なはずのモンベルは一体型で1種類だった。人差し指分離型はイスカのものや、モンベルも出している。

ちなみにヘリテイジを選んだのは、裾が長くて雪が入らないから。凍傷になった時はテムレスの隙間から雪が少々入ったということも原因としてある。


さて、中綿は未脱脂ウールにしてみた。これまでのプリマロフトと皮の掌の組み合わせはやや操作性が悪い。岩を掴むにはウールの方がいいかもと思ったわけだ。

買ったのはヒマラヤグローブというもので、編み方はわりとざっくりしている。モンベルのウール手袋でよく似たものもあるけど、それよりはフィット感が良かった。五本指を買ったけど、カモシカにはミトンタイプもあった。これも試してみたい気がする。

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最後にインナーとして薄手のメリノウール手袋を着ける。モンベルのもので、以前のモデルからは指先の強度が少し増した。

最初に買った10年前は数回で人差し指に穴が開いた。同じモデルを買った友達もやはりたちまち人差し指の先が出て、出た指先でスマートフォンをいじっていた。

今のは生地が強くなっているし、指先はスマートフォン対応だ。

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これらを装着して、先週大菩薩嶺に行った。まだ凍傷が治りきっておらず、すぐに指先が冷える。

感想としてはオーバーグローブにゆとりがあるので、中の未脱脂ウール手袋が少しカパカパする。逆に手が大きくてウール手袋のサイズを大きくしても大丈夫だろう。

操作感はミトンだろうと人差し指分離型だろうと変わらない気がする。そもそも人差し指を使って作業をすることなんかあまりなかった。

課題はクランポンの装着は頑張っても靴紐は結べない。靴紐が解けたらインナー手袋でやるか、未脱脂ウール手袋の状態で結べるかが問題だ。


今回は極端に寒いわけではなく、途中から暑くなってインナー手袋のみで行動したので、実験としては失敗だった。

3000n峰でマイナス10℃くらいで使わないと意味がない。


ちなみに凍傷になるとどうなるかを説明しておこう。

まず現場では指先が痛くなる。痛い次は痺れてきて、徐々にツンツンしても感じなくなる。下山した後は、とにかく元に戻らない。通常下山して暖かいところに行くと血が通いだすものなのに、死人のように冷えたままとなる。そして軽い症状の指は痺れるような感覚がずっと残り、よりひどい指は触れても感覚がない。

私の場合、日常で困ったのは、ボタンを留められないことと、キーボード操作がしにくいこと。触れても感じないので余計に厄介だ。特に今回は右手中指がひどいので、UとIとOという母音ボタンが押しにくくて不便。

 1ヶ月を経過しても指先に少し痺れた感覚が残り、一番症状のひどかった中指は爪全体が白くなっている。


今回は本当に愚かな真似をした。くれぐれも指は大切にしようと胸に刻んだ新年である。