「みなさんは接待を受けたことがあるでしょうか?」
唐突な質問を投げかけてみた。
接待とは。辞書的には「客をもてなすこと。湯茶や食事をふるまうこと」となる。つまりお茶でも白湯でも接待には違いない。
しかし、一般的に接待と言えば飯を食うことで、大抵は飯も高級飯。下戸でなければ酒も付く。
最近国会で接待が騒がれている。
何を食ったまで国会で問うのはどうかと思うが、他人が美味いものを食っているというのは感情的に許せないみたいだ。
接待はするのもされるのも多いに気を遣う。
本来、酒を酌み交わし、忌憚なき話をするための接待なわけなのに、誰のグラスが空いているかとか、この皿は向こうにも回さないととか、今日は接待される側だからあまり世話を焼くのは余計だとか。まあいろいろ考えるから何を食べたのか記憶にも残らない。
山崎豊子『華麗なる一族』では銀行が官僚にご接待をするシーンがある。
当然、ただ飯を食わせるだけでなく芸者をあげての宴会。芸者に川を渡る真似をさせる。
これだけだと何のことかわからない。
渡る川は最初、くるぶしくらいまで。それが膝下になり、膝上になると、芸者は濡れないように着物をたくし上げ、さらに水かさが増すと...という仕掛けである。
アホらしいんだけど、これが高級接待だったんだろう。高級飯だけでなく、こんな接待なら受けたいかというと、第三者的に鼻の下を伸ばした自分を想像して嫌になった。
今、国会でわいわい言っているのは7万円くらいの高級飯らしい。
別に他人が何を食べようとどうでもいいが、みんな気疲れして供された高級食材はきっと記憶にも残されてないだろう。
私もまだ新人の頃は、「一食浮く!」という一念で耐えていたが、食欲も落ち着いた今は何も気を遣ってまで飯を食いたいと思わない。
そもそも、「接待はされたいものかい?」と問いたくなる。
『山と渓谷』が作家・椎名誠さんに原稿を依頼した際、高級クラブの接待は無理と考えた編集者・三島悟氏はキャンプで接待したらしい。
キャンプならちっちゃいお猪口とか、氷ばかりのグラスで注いだり注がれたりをやらないでいいから、接待もさぞかし楽だろう。デカいタンブラーかシェラカップにゴボゴボ注げばいいのだ。
椎名誠も著書で、編集者(ヤマケイやアウトドア雑誌と別の)をキャンプに連れて行くと、お酌を始めて困ると書いていた。
そういうわけで、接待ならキャンプに行きたいということで結びにする。