さて、飛行機は定刻から20分ほど遅れて飛び立ち、やはり定刻から20分ほど遅れて宮古空港に到着した。
やれやれである。
しかし、ここから「やれやれ」で済まない出来事が連発する。
飛行機を降りて、しばらくすると「自転車をお預けになった方は階段付近でお待ちください」とアナウンスがあった。待っていると係員の方が
「飛行機の中で荷崩れが起きたらしく、これが落ちていました」
とのこと。見れば車輪の軸、クイックレリーズが係員の手にある。私のではない。他にいた2人の男性は「違う」と下がった。
ただ、よくよく見るとその黒いクイックレリーズは相方の自転車に付いていた気がする。すると相方は
「私のかもしれません」
と隣から申し出た。
クイックレリーズとは、自転車の車輪の部品で、スポーツサイクルの場合、車輪を外せるように手動のレバーが付いている。簡単に外せるということで「クイック」と名が付いているわけだ。
しかし、輪行時に緩めたネジは当然ある程度戻しておかないと外れることになる。私は毎回注意しているのだが、初心者の相方に話すのを忘れていた。
軸だけを受け取った相方。ただ、軸には受け側のネジが必ず必要となる。それがないと車輪は固定できない。
嫌な予感がした。
直ちに受けのネジを探すが見つからない。外れた時に落ちたのだろう。
ガーンである。
受けのネジは1.5cmくらいの部品となる。なくてはならない部品ながら、落とすと見つかる可能性はかなり低い。万が一の期待を込めて航空会社のスタッフにお願いしてまずは宮古空港で探してもらう。
こうなると現地調達しかない。宮古島の自転車屋さんにピッタリサイズがなければ今回の自転車旅はオジャンとなる。
私はとりあえず自分の自転車を組み立て、調達に向かうことにした。
宮古島は雨だった。20度くらいで雪の東京に比べたら暖かくはあるが濡れたい気温ではない。
まずは前輪を付ける。
次に後輪を付けるのに保護用の金具を外した時に気が付いた。保護金具とは後輪を外している間、フレームを保護するための擬似的な車軸だが、本当の車輪と同様にクイックレリーズが付いている。
そしてクイックレリーズの受け側のネジも付いている。
あっと気づいた私はクイックレリーズと合わせてみると、サイズはピッタリだった。
これで宮古島サイクリングが開始できる。喜びより先にまずはホッとした。
今は寝不足になりながらたどり着いた宮古島サイクリングのスタート地点なのだ。