クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

天才の三次元的思考

週末はボー然と過ごしてしまった。

ボーっとしたいとか書きつつ、本当にボーっとしてしまうと貴重な時間を無駄にした気分になる。まあ、蒸し暑かったし仕方ないかということで、週末は本を読んで過ごした。

 

谷川浩司藤井聡太論』という本を図書館で見つけて読みだした。谷川浩司九段は、つい先日、藤井聡太名人が誕生するまで、長らく最年少名人だった棋士である。両社とも中学生棋士であり、天才が天才を語るというのがこの本のコンセプトだ。

その中で、なかなか面白いかったのが「三次元的思考」という話。

これは藤井聡太の師匠、杉本昌隆九段の表現で藤井聡太には局面が浮き上がって見える感覚があるのだという。将棋はもちろん二次元の戦いだが、持ち駒というルールがあるので、初期設定の位置からどんどん変化する。

棋士たる者、初期設定のままであれば局面を瞬時に把握することができるのだが、中盤以降は種々の駒が入り乱れるので、プロとはいえそれが難しくなる。その混沌とした状態でも局面に濃淡を付けて正確に捕捉できる感覚を「三次元的思考」と呼んでいるのだ。

凡夫たる私にはその感覚はさっぱりわからない。

ここで思い出したのは、以前見たクライマー・山野井泰史さんの動画。動画は、上越の山で釣りをしながら岩山に登るという比較的のどかなもので、命懸けのクライミングというものではない。

ただ、この時に驚いたのは山野井さんの空間認識能力だ。下から岩壁を見上げ、パートナーと「こう行こう」と打合せをして登り始める。しかし、人間は現在地が変わると景色が変わるので、想定ルートがどこだったか混乱をきたしてしまう。

それを山野井さんは「そこが、最初に言ってたルート」と完璧に捉えていた。同行者もやはり実力者で、読図能力などは上なのだろうが、全くついて行けてない。

まさに文字通りの三次元的な認識能力なのである。

 

というわけで、何の脈絡もなく将棋と登山を結び付けて書いてみた。

特にこの話にはオチはなくて、「天才ってすっげーなあ」ということだけだ。ただ、好きなことを突き詰めれば、その実像が浮き上がって見える瞬間があるのかもしれない。