9泊10日の旅をした。
こう言うと、
「なんて経済的余裕があるんでしょう、このコロナ禍に」
となるわけだが、2名で20万円くらいである。なにしろ行き先は北海道で交通費が半分以上を占めたはずだから、近場ならとんでもなく安上がりだっただろう。
そんな貧乏旅行の秘密はテント泊と自炊で、半分は自炊。まあ登山中に店に入るのは不可能なんだけど、とにかく人間は喰う物喰って寝られれば生きていけるのである。
そんな耐乏テント生活ではあるものの、今回はアメリカ人の知り合いができたり、女釣り師に会ったり非常に楽しかった。
アメリカ人は利尻で会った人で、目黒に住み、日本語、中国語、ハングルにも通じるインテリらしい。大学で日本文学をやっていたらしく、私が
「ドナルド・キーンみたい」
と言ったら
「ドナルド・キーンはぼくの先生の先生だよ!」
と言って、早速先生(ドナルド・キーンの教え子)に連絡して嬉しそうだった。
彼は百名山を目指しているらしく、利尻山の後は羅臼岳を目指すらしく、稚内から札幌の戻り、斜里、知床を目指すらしい。
羊蹄山の麓で会った女釣り師は山は3時間も歩けないという、なぜかひ弱なアウトドア派だった。
「どうだ。暗いだろ」
と言って説得し、少年が納得したところで戻った。
この女釣り師は札幌出身で、学童をやっているらしく、子どもの扱いには慣れている。そして大人に対しては自身の釣ったヤマメの天ぷらを振る舞い、北海道らしい壁のない扱いで楽しませてくれた。
夏の北海道は楽しい。
10年前に旅した北海道を味合わせてくれる。当時の私と同じ年代の青年が少ないのは少々残念だが、当時のロマンチシズムを求める世代が今でも集まっているということだろう。
コロナ・コロナでマスクをしている都会とは違って、マスクをしている人はその野営場に一人もいなかった。