クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

居酒屋と食い物の恨み

先日、久しぶりに同期で集まって飲み会をした。思えば入社時はみんなで安居酒屋チェーンか何かでわっと集まったのが、もはや残るところ数名となってしまい、みんなオッサン、オバサンとなってしまった。

今回は唯一の女子が一人では行かない「いい所」に行きたいというわけで、いつもよりかなり高い店を予約してくれた。

場所は東京駅から徒歩25分くらいで、決して最高の立地というわけではない。店は地下にあり、模擬料亭風の入口をくぐると和服のきれいなお姉さんが個室に通してくれる。

部屋に入ると担当のスタッフとやらが幹事に名刺を出し、「お帰りのハイヤーは?」などと聞く。どうやら重役の方がご接待にご利用されるような店らしい。

 

こうなると料理への期待は否が応でも高まる。

ところが今思い出しても食ったものについては記憶のカケラくらいしかない。

最初に出た鮎の南蛮漬けのようなものは、鮎がワカサギくらいの大きさしかないし、刺身の盛り合わせは鮪や鯛みたいな定番しか入っていない。

最後にメインとばかりに出た小さなすき焼きは、アルコールの固形燃料で茹でて調理する。いい肉なんだろうが、鉄鍋で肉を焼かないので全くもって間の抜けたすき「焼き」だ。

さて、酒の種類はと見ると日本酒は普通の白鶴。あとのメニューもハイボールやらサワー類やらで怒りを通り越して呆れてしまった。

さらに家に帰って相方に金額と対価が合わないと愚痴るとケチな奴という感じで今度はこちらが呆れられてしまった。

その食い物の恨みも2週間くらい経って、ようやく冷めた頃、太田和彦『居酒屋道楽』という本を読んでいると再び蘇ってしまった。

筆者は名うての居酒屋好きで、本業はグラフィックデザイナーながら、日本全国の居酒屋について著作を残している。

いい居酒屋は、酒の味を引き立てる料理を出し、季節を捉えたお品書きを用意している。さらに酔客を許さない頑固おやじがいて、店の雰囲気を保っていたりと、読んでいるうちに清潔な料亭風の店より煤の付いた居酒屋に行きたくなってしまった。

そして、ますますあの「御接待用京風料亭的懐石料理」に腹が立ってきたというわけだ。

 

今は仕事落ち着いたら登山に行って下山してからいい雰囲気の居酒屋で一杯やりたいと考えている。