クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

3シーズン用登山靴に悩む③〜夏靴と冬靴の話

いつまで登山靴の話題を引っ張るのかと言われそうだが、道具の話は始めると止まらないのが山屋なのだ。

先日の石井スポーツの店員さんもそんな感じだった。過去のモデルと現行モデルの違いや、メーカーごとのサイズやスペックの差。そんな話を振ると嬉々として語り始めて試着よりおしゃべりが長くなる。

しかし、私もそんな話が好きなのだ。

 

その店員さんに聞いた話。

メーカーによって夏と冬で幅が違うらしい。つまり夏靴で合うからといって、冬靴が合うとは限らないようだ。

私が現在冬場に使っているのはSCARPAのファントム。これはSCARPAの靴の中でも例外的に幅が狭いらしい。

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現在、愛用中のSCARPA ファントム

過去、SCARPAの3シーズン用登山靴を買ったことがある。

店ではいい感じかと思ったが、山で履くとつま先が当たり、3日も履くと痛くてたまらなかった。私の足に比べて幅が広いらしい。

結局この靴を履いたのは、仙丈ヶ岳ピストン1泊2日、岳沢からの奥穂高岳1泊2日、早月尾根からの剱岳2泊3日、阿弥陀岳南稜1泊2日くらいだったと思う。

実働10日くらいだろうか。

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SCARPAのシャルモだったかな

 

 

冬靴は夏靴より小ぶりにできているのかと思えばそうではない。

夏靴では私に合うLA SPORTIVAの定番モデル、ネパール EVOという厳冬期用のレザーブーツは幅が広くて私には合わないだろうというのが店員さんの見解。メーカーによって夏冬でややスペックが変わるそうだ。

実際、試しに履いたことはあるが、少しカパカパする気がして止めにした記憶がある。LA SPORTIVAの靴はどれも足を包み込む柔らかさと心地よさがあり、足首の柔らかさもいい感じなので思わず選びそうになったがよかった。

 

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40年前の重登山靴(父の愛用品)

 40年以上前はいわゆる重登山靴と呼ばれる靴があった。

 植村直己記念館にありそうな皮の靴で、「重」が付く通り重い。外も中もカチカチに硬くて重戦車のよう。当時の登山者は夏も冬も同じ靴で山を闊歩していたらしい。そう考えると夏冬で使い分けるのは大変贅沢な話。

ありがたいありがたいと感じつつも足にも懐にも合う靴を探すのは大変だったり、楽しかったりしている。

3シーズン用登山靴に悩む②〜過去の遍歴AKUとSIRIO

果たしてニューブーツはLA SPORTIVAに決着するのか。それについてはのんびり決めるつもりだ。

まあ早いところ新製品のAEQUILIBRIUMを試してみたい。

 

ところで店員さんと話していたら、過去私が履いた登山靴の選択は間違いなかったらしい。

誰の参考になるかわからないけど書いてみよう。

 

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AKU フィッツロイ GTX

①AKU フィッツロイ

これは冬山1年生の時に買った。

前コバは付いていないので、完全な厳冬期登山靴ではない。ただ、若干の保温材が入っているという中途半端な代物である。

幅は私の足に合っている。つまりSPORTIVAの合う人には合うだろう。

ただ、私の足は甲が薄く、扁平足気味なので、クランポンを着けると靴の中で上下に動いた。おまけに踵の肉も薄いので踵だけ靴擦れになることがあった。

逆に言えば、SPORTIVAで上下の圧迫感を感じたらAKUが合うかもしれない。

 

なお、このフィッツロイだが、もう10年近く前に買ったものなので、お店の人からはそろそろ崩壊するかもしれないという注意を受けた。ソールがきれいなだけに捨てるに忍びなくて困っている。

 

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SIRIO 型式不明

②SIRIO 型式不明

数ヶ月前に山幸という店を覗いたことがある。

店長は登山靴に殊の外拘りがあるらしく、というかいい加減な心持ちで行くとお叱りを受けそうな雰囲気すらあった。以前に書いた気もするが、この時勧められたのはSIRIOである。

 

SIRIOの靴と私は初対面ではなく、以前愛用していた。これは買ったのでなくもらったもので、一緒に富士山へ行った先輩から譲り受けたものだ。先輩はゼビオかどこかで適当に買ったと言っていた。

このSIRIOもまあ酷使した。富山・折立から雲ノ平を経て新穂高温泉2泊3日とか、長野・扇沢から鹿島槍ヶ岳五竜岳を経て遠見尾根の1泊2日とかはこの靴で行った。

初心者向け、富士山用の靴なので、同行者からはふざけているのかという顔をされたけど。

 

SIRIOは足の幅に合わせて3E、2Eという具合にサイズ展開がされている。足のサイズは大抵縦の長さのみで測るから、横はメーカーを選択して選ぶことが多いが、SIRIOは横の長さも面倒を見るというわけだ。

過去履いていた靴は型式もサイズも不明だが、先の山幸では3Eという判定を受けた。軽さや包み込むような履き心地はLA SPORTIVAが一枚も二枚も上手だが、価格は下手をすれば半分くらいとなる。

価格を考えればSIRIO。

 

そんなことを考えるとますます混迷を深めそうだ。

3シーズン用登山靴に悩む①〜やっぱりLA SPORTIVAになるか

久しぶりに山道具の話なんか書こうと思う。

昨年まで使っていた3シーズン用登山靴はLA SPORTIVAのTRANGO TRKというモデルで、本来の用途はライトトレッキング。ソールが柔らかいので、そこそこ整備された登山道向けである。これでもってワシワシと歩いていた。

具体例を挙げると、北アルプス・室堂から薬師岳黒部五郎岳を越える3泊4日とか、長野・七倉から山を越えて黒部湖、そこから赤牛岳、水晶岳鷲羽岳を越えて西鎌尾根から槍ヶ岳、大キレットを越えて上高地に下山する4泊5日。

まあ岩場だろうが林道だろうがお構いなしに酷使した結果、わずか3年ばかりで二足が壊れた。

ちょっと登山靴への考え方を少し考え直さねばならない。

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2代にわたって使ったTRANGO TRK



 

暑い暑い土曜日にMt.スポーツ石井に向かう。

今回のポイントは

①ソールが固い

②軽い

③丈夫

である。

店員さんに測定してもらった結果

「DとEの間です。どちらかと言えばE寄りですが、幅広とは言えないですね」

と言われた。この足に合うのはAKUかLA SPORTIVAというイタリアンブーツ。

高いのである。

まずは定番のこれを試した。

www.sportivajapan.com

以前にも試したことがあるが、その時より幅広になったとのこと。確かに前は幅が狭く、圧迫感があった。今回は包み込むような感じがある。

ただ、お値段は5万円弱。いざという時に思い切りのない私は考え込んでしまった。

 

一旦結論を保留にし、帰途に就く。

電車でLA SPORTIVAの新モデルがAEQUIBRIUMというが出ていることを思い出した。最初に記事を見た時は、「4万超とはふざけたものを」と一笑に付していたが、もっと高いTRANGOを試して金銭感覚がおかしくなっている。

もうこれも試してみるしかない。

こうやって登山者の金銭感覚は崩壊していくのだろう。

www.sportivajapan.com

人生の格言と男の信念

 

 あっという間に2021年の半分が終わった。この調子ではあっという間に1年となり、あっという間に老後となり、あっという間に死を間近にしそうでなんとも怖い。そしていつしか「ジンセイとは」とか語りだしてしまうのだ。

人生とは何か。

あらゆる偉人が、答えらしきものや警句を放っている。それについてちょっと書きたい。

 

All the world's a stage, And all the men and women are merely players.

この世は舞台、人は役者

シェークスピア

ラソンランナーは人生をマラソンに、登山者は人生を登山に譬えるだろう。

前後を詳しく知らないのだが、自分の携わったことに譬えるのは最も簡便な方法だし、自分の中で腑に落ちることになる。

 

A life spent making mistakes is not only more honorable, but more useful than a life spent doing nothing.

間違いを犯した人生はなにもしない人生よりよほど誇らしいものである。

ジョージ・バーナード・ショー

劇作家で、シェークスピア以上に格言というか警句が多いのがバーナード・ショー。その中ではかなり正攻法の格言と言える。

「人生に間違いはない」と言いつつも間違いを恐れるのが人である。あっさりと「間違ってもいい」と言い切ってくれる勇気を与えてくれる。

 

どうもバーナード・ショーはこの手の格言が多いらしく、こんなのもある。

There is two tragedies in life. One is not to get your heart's desire. The other is to get it.

 人生には2つの悲劇がある。1つは本当に欲しいものが手に入らないこと。そしてもう1つは手に入ってしまうことだ。

夢は追いかけている時が一番楽しい。私も登山の中であとちょっとで着くという時が一番楽しいかもしれない。

 

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Life can be wonderful if you’re not afraid of it. All it takes is courage, imagination… and a little dough.

人生は恐れなければ素晴らしいものになりうる。必要なのは勇気と想像力と少しのお金だ。

チャールズ・チャップリン

少しのお金というところがユーモアとして素晴らしい。人生で必要なお金は3億円だからって、「3億円必要です」と書いたら反発を生む。

いくらとは言っていない。あくまで'a little'なのだ。

 

人生は一箱のマッチに似ている。 重大に扱うのはばかばかしい。 重大に扱わねば危険である。

芥川龍之介侏儒の言葉』より

これは個人的に好きな言葉。シニカルな芥川らしい。

マスクをして街中を歩く一方で沢登りで溺れかけたりしているとこの言葉が身に染みてくる。

ただ「危険だ、危険だ」と死なないことに一生を費やすのもどうかと思ったりする。

 

しかし、いろいろ挙げたが、最も男の信念(女ももちろん)を貫いた言葉はこれかもしれない。

これでいいのだ

バカボンのパパ

梅雨の時期に読みたい山の本

梅雨に入って梅雨らしい天気が続いている。

年間降水量は例年、10月の台風シーズンの方が多いようだ。しかし、熱海で土砂崩れがあったように、ここのところ例年がどんな感じかわからない状態が続いていて、降ってみないとわからんことになっている。

そんな梅雨時に読みたい山の本を紹介したい。

 

①伊藤正一『黒部の山賊』

もともとは伊藤正一さんが経営する三俣山荘や雲ノ平小屋で売られていた本だそうだ。

北アルプスの最奥にあるこれらの山小屋の創業についての物語なのだが、戦後手つかずの山中の雰囲気が漂ってなんともいい。

北アルプスには「山賊」と呼ばれた猟師たちがいて、熊を追い、岩魚を釣って暮らしていた。まだ山には河童やカワウソ、カモシカなどが共存していた時代である。筆者の伊藤正一さんは技術者であり、決して荒唐無稽なフィクションを好んで書くような感じはしないのだが、それでも説明のつかない出来事を軽いタッチで描いている。

読むと山という異世界に迷い込む感じがして梅雨時にはちょうどよい。

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畦地梅太郎の版画が表紙の『黒部の山賊』

沢木耕太郎『凍』

登山家・山野井泰史、妙子夫妻のギャチュンカン北壁登攀を中心としたノンフィクション。

私は今はなき品川駅のBOOK EXPRESSで買った記憶がある。その時、書店員の紹介では「夫婦の絆」というようなことが書いてあった記憶があるのだが、そんな話ではない。彼ら夫婦は山において互いを対等なパートナーとしてみなしている。

ストーリーはギャチュンカン登山と中心に進むが、山野井夫婦の生い立ちが随所に散らばっている。山に登らない、クライマーではない人でもなぜ命のかかった登山をするのか、丁寧に書かれている。とはいえ、その書店員はよくわからなくなって「夫婦の絆」という解説を付けてしまったのではないだろうか。

読み方はそれぞれだが、生きることへの自由、死ぬことへの自由というところが登山には重要なんだろうと思ったりする。

この本のどこが梅雨時向けかと言えば、とんでもなく寒そうだからだ。冬に読むと余計に寒いので、外の雨を眺めながら少し涼しい気分を味わってはいかがだろうか。

ITリテラシーとスマートフォン

2020年の大学新卒者の特徴に「ITリテラシーが高い」とあった。

常に新しい技術への対応力があるのは若い人だし、今の20歳くらいの人はガラケーなんか知らず、最初からスマートフォン。まあスマホの扱いには長けているだろう。

 しかし、それだけでITと言えるのか?リテラシーとは読解力のことだぞ。それが本当に高いんかいねぇと疑問に思う。

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フレッド・ボーゲルスタイン『アップルvs.グーグル:どちらが世界を支配するのか』を読んでいる。

 二社とも世界を席巻しているマンモス企業。時価総額から言えばマンモスどころかウルトラサウルスくらい。とにかく史上最大の規模になっている。

そのアップルがiPodで音楽の世界を変え、iPhoneが携帯電話の概念を変え、iPadがメディアのあり方に一石を投じた。一方のグーグルはアンドロイドによるプラットフォームの制圧を図り、アップルとの激しい抗争を繰り広げる。

現代の最先端技術の姿が現れている。

 

そんな最先端の勝負が描かれている本書なのだが、いざ製品を使うとなると取扱説明書がいらないくらいわかりやすい。

かつて実家でパソコンを買い換えると、セットアップは半日がかり。だいたいセットアップの仕方なんてすっかり忘れた頃に買い換えるのだから、分厚い説明書を見ながら家族総出で「あーでもないこーでもない」とやっていた。かつてのパソコンはとにかく難しかった記憶しかない。

そんな経験をしているだけに、ITリテラシーが高いと言われても何が高いのかさっぱりわからなくない。

 

この『アップルvs.グーグル』を読み進めると、いかに初期のiPhoneであったりアンドロイドが不完全な製品だったかわかる。

ジョブズがデモンストレーションをしたiPhoneは電話、インターネット検索、マップの閲覧などの手順を間違うだけでフリーズするくらいだった。私の父はなぜか初期のころのiPhoneを持っていて(会社貸与)、電池はなくなりやすいし、ミスタイプしやすいキーボードだった。

それでも出してしまおうというところがすごい。完璧主義な日本企業にはできないだろう。

しばしば日本企業はなぜ革新的な商品を出せないのかという議論になる。そうすると理系が少ないとか、プログラミングの授業がないとなんでいう議論になる。

しかし、ITリテラシーなんていう問題ではない。理想の商品を思い描いて、「えいや!」と発売してしまう度胸が最も足りないんじゃないかと私には思えてしまう。

新型コロナのワクチンを接種したら

コロナワクチンを接種できるというので行ってみた。

副作用が怖いとかいろいろ意見はあろうけど、機会を逃すとできなくなる可能性もあるし、怖い怖いと言っていても仕方がない。

わかっていることは「多分大丈夫。すぐ死ぬことはあるまい」ということだけ。今回は自分の身体を使った人体実験である。

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さて、田町のクリニックで流れ作業のように左肩に接種された私のその後を書こうと思う。

1時間後、接種した肩周りがポッポしてくる。

5時間後、体温が普段より1℃弱上がった気がする。平熱が低いので測っても36℃台なのだが。

1日後、痛いというほどではないが、左肩から腕に違和感。とりあえず今日は腕立てはよそう。

2日後、つまり今日だが、左肩の痛みが増したような。それと身体が怠くてランニングする気がしない。

ただ、これは普段の疲れがたまっていただけなのか判別がつかない。


とりあえず今日まで無事ではいる。

しかし、インフルエンザを含めてこれほど副作用のあった予防接種は経験ない。

これからまた2回目があるそうだが、どうなるか。まあ人生経験として腹をくくるしかない。