クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

北海道を巡る冒険-序 2021年大人の夏休み

今年も北海道へ行こうと思う。

去年はかなり発作的に行ったが、今年はやや予約が取りにくかったので5月くらいには予約した。コロナ、コロナの時期にとは言われそうだが、ゴールデンウイークも遊んでいないのでお許しいただきたい。

 

 今年は北海道の東を攻めようかと考えている。

昨年同様に旭川から始め、知床を目指すのだ。学生時代に自転車でこのルートは行ったことがあるのだが、寄り道が少なくて今一つ自転車に乗っていた以外のアクティビティが少なかった。今回はそれを補う旅となる。

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昨年の利尻山ローソク

もちろん、今回もテント持参のサバイバル旅。エキノコックス対策のため浄水器も買った。

問題は天気で、昨年同様かなり不順。台風もガンガン来ている。

ただ、あとは楽しむだけなのだ。大人の夏休みの開幕である。

 

北海道縦走登山の準備をする~マット編

昔、ある少年役の声優さんが自己紹介に「趣味:寝ること食べること」と書いている人がいた。これは趣味なのかという気もするが、寝ることが好きというのは私も同じ。キャンプが好きというより寝たい時に寝られることなのだ。

というわけで「安眠」が長旅でのテーマとなる。安眠に必要なのは寝袋よりむしろマットとなる。 

yachanman.hatenablog.com

 マットのことについては過去にあれこれ書いたので今回は結論のみ。

これまた今年の2月に屋久島に行った時、EXPEDのエアマットが壊れてしまった(ここのところ道具の壊れ具合がすごい)。エアマットの買い替えも考えたが、今はどれもこれも高級品になってしまってどうもという感じだ。かつては5000円くらいであったのが、サーマレストのネオエアなんて20000円超えとベッドでも買えそうな勢いなのである。

考えた末に出した結論は、クローズドマット、つまり空気を入れないウレタンマットを持って行くということ。地味だがバックパックに外付けして行くことにした。

今回、私はサーマレスト リッジレスト、相方はコンパクトなZライト。マットを外付けにすることの賛否はあるけど、最近は岩や木にガンガンぶつけながらマットを酷使している。

今回もまあボロボロ覚悟で持って行くつもりだ。

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サーマレスト Zライト

 

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側面に付いているサーマレスト リッジレスト

 

 

北海道縦走登山の準備をする~着替え編

縦走登山で最大の悩みは何か。それはテントでも食料計画でもヘッドトーチの明るさでもなく、着替えの数。

山屋としては当たり前のこととして 山中で基本的に着替えることはない。しかしながら、今回は北海道で2000m前後を長時間縦走し、下山したら市中観光もしようという魂胆なので、ずっと着た切り雀はできない。下山したら意外と寒いということもあるし、暑いかもしれない。

昨年、利尻島礼文島に行った。この時はやけに蒸し暑かった。おまけに雨が多く、結局のところ寒い日はなかった。今回は縦走する場合を考えると雨に打たれる可能性もあるし、下山して洗濯できるかも問題だ。

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Patagonia キャップリーン ミッド

 そんなわけで相方とあーでもない、こーでもないと厳選した結果は。

・メイン Patagonia キャップリーン ミッド

・サブ Patagonia キャップリーン ライト

・下山時 Patagonia キャップリーン Tシャツ

・防寒着 Patagonia R1プルオーバー

・レインウェア Patagonia トレントシェルジャケット・パンツ

・その他替えのパンツ1、下着2、靴下2

パタゴニアだらけになった。基本は山シャツのみ。すぐ乾くようにする。相方は見事にモンベルだらけ。レインウェアだけは使い込んだバーグハウス。

今回は防寒着が肝で、相方は化繊のインシュレーション、モンベルのサーマラップ。私はフリースとしてR1にした。

吉と出るか凶と出るか。天気はどうなるだろうか。

今から不安で楽しみで仕事が手につかない。

北海道縦走登山の準備をする~ストック編

先日の奥穂高岳でついにストックが壊れた。

厳密に言えば買って1回目の使用でひん曲げてしまったので、すでに壊れているのだが、その状態で10年以上使い続けた。その結果、スプリングは完全に弾力を失い、プラスチックの部分が剥がれ落ちるようになってしまった。

奥穂高岳登山ではプラスチックが剥がれた部分に指が挟まるという次第で、いくらなんでも限界。仕方ないので買いに出かけた。

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曲がった状態で使い続けたブラックダイヤモンド トレイルショック

ストックのメーカーはブラックダイヤモンド、レキ、シナノ、モンベルなんかがある。その他にもマジックマウンテン、フォックスファイヤーなんかも出しているようだ。

老舗はレキで、10年前にも検討したことがある。この当時はレキは接続部をクルクル回して固定するスクリュー式、ブラックダイヤモンドがレバーで留めるフリックロック式を取っており、互いに優秀性を競っていた。確か、スクリュー式は均一に圧力がかかり、しっかり留まる。フリックロック式はグローブを着けた状態でも操作は簡単ということだった。

その時は私は「冬でも使うならフリックロックでしょ」とブラックダイヤモンドを選んだ記憶がある。

 

時を経て今はレバーの方が多い。そしてトレンドはアルミではなくカーボン。

いろいろ見て私が選んだのは下のとおり。

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ブラックダイヤモンド トレイル ウィメンズ。なんともド定番。一番シンプル。

アンチショックは前回最後に壊れたので付けなかった。10年も酷使すれば壊れるのは当然だけど。

手を通すスリーブが他のメーカーより厚くて思いっきり体重をかける私には合っているし、フリックロック式にも安心感がある。前より機構はスムーズになった気がする。

なぜウィメンズかと言えば在庫がなかったのと、長さがメンズほどいらないから。メンズは140cmまで使えるそうだけど、私は120cmあれば十分。

そしてこのシンプルなストックにはスノーバスケットが付いているのもポイントが高い。

上位機種のトレイル プロは1回のロックで使えるというのが売りのようだが、スノーバスケットは別売り。

結局一番安くてシンプルなものを選んでしまった。これから先10年はお付き合いさせていただこうと思います。

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ブロッケンを見たことありますか?

奥穂高岳登山は絶景とはいかなかった。天気予報はそれなりによかったのだが、2日目の頂上付近はずっと曇っていて、最後まで晴れることはなかったのは残念。

その代わりに見たのがブロッケン現象で、初めての相方は興奮していた。私は何度か見ているので淡々としていたのだが、こういう反応は人それぞれで面白い。

「あー、また出た」という人。「わー、いいもの見れた!」という人。雷鳥に対する反応と近いものがある。

 

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今回、奥穂高岳で見たブロッケン

 私が見たのはおそらく4度目くらい。

初めては同じく奥穂高岳登山の時で、7年ほど前。残雪期に涸沢にテントを張り、2日目に頂上を往復して下山した時のこと、真上を見上げると円形の虹がかかっている。しばらくすると虹は二重になり、再び一つになって消えた。

 あまりの不思議にポカンとしていたら、日差しで顔がメチャクチャに焼けてしまった。

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これまた涸沢で見た不思議な二重虹

 次に見たのは冬の八ヶ岳

年末に美濃戸口から赤岳展望荘を目指す途中、稜線で雲に巻かれた。年末のことなのでトレースははっきりしていて、迷うことはない。ただ、展望が失われたことに少しがっかりしていると、足元に突如虹が起きた。ブロッケンである。

この時、ブロッケンとは自分の姿が光を拡散して起きるということを知った。なるほど虹が仏様の後光のように輝き、神々しいばかりに見える。

興奮して写真を撮る私に対して、同行の友人は淡々としていた。見慣れているのだろうか。

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冬の八ヶ岳で見たブロッケン


3度目は夏、鹿島槍ヶ岳から五竜岳への縦走、八峰キレットを行った時の朝方見かけた。

「おーっ!」という私に同行者はこれまた淡々としている。1人が興奮しているともう1人は冷めるのかもしれない。この時は天気予報が悪かった間隙を縫っての登山だったので、余計にラッキーと感じていた。

 

さて、今回は雲が晴れそうで晴れない中、ブロッケンが出た。正面の槍ヶ岳を眺めつつ背後のブロッケンを見る。忙しく前後を見渡した。

晴れはしなかったが、山に浸れるという意味でブロッケンは山屋にとって吉兆なのかもしれない。

 

奥穂高岳でドランゴ タワー GTXの試しばきをする

連休に急遽、奥穂高岳に登ってきた。この週は天気予報がコロコロ変わってどうしようかという感じだったが、後半の2日に賭けてみた。

ちょっと無理をして奥穂高岳に行ったのは先日買ったLA SPORTIVA ドランゴ タワーの試しばきのためもあった。試しばきに選ぶには穂高様に大変失礼なのだが、まあとにかく暑いので高所に行きたかったのだ。

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おニューのトランゴ タワー GTX

兎にも角にも感想。

足元を包み込む感じはさすが。前にAKUの靴を使ったときに、踵が擦れて血が滲むくらいの靴擦れになったことがある。今回もそれを懸念したものの、足の甲からふわりと持ち上がる感じで踵がズレることはなかった。

LA SPORTIVAはこの包み込む感じが秀逸だ。結局買わなかったけど、厳冬期用のネパール エボも柔らかく包み込む感じがある。スカルパはガッチリホールドする感じ。このあたりが値段の差に出るのか。

感覚としては極端な軽さは感じないが、足回りの動きは軽やかにできる。岩場の乗越しもなかなか。細かいホールドにも乗りやすかった。

 

奥穂高岳は涸沢近辺、奥穂高岳の周囲、前穂高から伸びる吊り尾根など、岩場がかなり多いのだが、尖った岩に対してはビブラムのソールがフィットする。

一方で上高地から横尾までの平坦道はややロボット歩きを強制されるので、歩きにくい。ハイカットシューズの宿命ではあるのだが、1日中履くと疲れる。

ただ、靴そのものは足首に可動性を持たせているので、歩き心地は予想以上に良かった。私の場合、足首の内側の骨が出ているので、そこだけは当たって痛い。次の縦走までにそれだけはなんとかせねば。

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今回の荷物

ちなみに今回背負った荷物は45Lのアセンジョニスト。
中身はテント3人用、テントマット、3シーズン用寝袋、水2Lちょっと、食料など。夏山の標準装備を詰め込んで10kgちょっとというところ。

感覚的にはトランゴシリーズの上位、トランゴ アルプは20kgくらい、トランゴ タワー10kg~20kg、10kg未満はトランゴ エボくらいでいいんじゃないかと。まあ何の根拠もないんだけど、剛性と荷物の重量を考えるとそんなもんかな。

 

さて、今回は自分が久しぶりに高い買い物をしただけに他人の持ち物が気になる。

上高地〜横尾〜涸沢〜奥穂高岳〜岳沢〜上高地間で最も多く見かけた靴はモンベル。その次がLA SPORTIVAだった。モンベルコスパSPORTIVA は機能(あるいは見栄?)重視だろうか。

 LA SPORTIVAの内訳は、トランゴ タワー GTXは8人、トランゴ エボ3人、トランゴ アルプ5人といったところ。あとアプローチシューズであるボルダーXなどのソールの柔らかいうつも結構見かけた。やはりLA SPORTIVA強し。

 最新モデルのエクイリビウム ST GTXも2人いた。軽そうでよかったが、石井スポーツの店員さんの言うようにトランゴ エボとアッパーは同じような素材。ソールは少し沿っていて、平地では歩きやすいように工夫されている。ちょっと興味は沸いたが、タワーを買った以上は当分おあずけになってしまった。

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今回の山行ではまずまずの具合。

まだ靴が固くて下山して向う脛あたりが痛くなったが、徐々に履き慣れていくことを期待したい。

夏の奥穂高岳登山②~穂高岳山荘から奥穂高岳へ

穂高岳山荘は奥穂高岳涸沢岳の間の少し落ち込んだ部分にある。標高は3000m弱ということで日本で1番ではないが、最も高いところに位置する山小屋の一つである。

高い分、天候の変化も受けやすく、雨も風も受けやすい。ただ、この日到着した時点では雲は増えたものの、晴れ。風もなくみんなのんびりビールを飲んだり日向ぼっこをしたりしていた。

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この瞬間が山で一番好きだったりする。

頂上を極めるというよりボンヤリする時間。ビールを飲むか、つまみを食うか、本を読むか、景色を眺めるしかない時間。ただ、夕暮れを待つ時間。

やがて雲が湧き、景色が見えなくなった。仕方ないのでテントに引っ込んで本を読んでいるとウトウト寝てしまった。

しばらくするとパタパタとテントを叩く音がする。雨のようだ。慌てて外に出していた靴を前室にしまい、またウトウトする。

雨が止むと青空と雲が交互に押し寄せ、滝谷方面の景色を時々写真に収める。前穂高常念岳方面は曇ったままだ。

日暮れ時にはブロッケンが出た。光と影の狂騒を眺め、明日の朝に期待して7時には眠りに就いた。

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滝谷の岩壁





翌朝は霧。雨こそ降りそうにないが、白い闇が包み込んでいる。

アルファ米のカレーピラフと五目御飯を1.5人前ずつ腹に納め、穂高岳山荘の上にある梯子を登り始める。

頂上までは山荘から1時間ほど。数人の人が晴れるのを待っていた。

時折、雲が抜ける。青空が出る。そのたびに絶景を期待するが、すぐに雲が覆い、再び白い世界に戻る。雲と空の駆け引きが続いた。

そうこうしているうちに昨日に続いてのブロッケン。今回はブロッケンが出たことでヨシとしよう。

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ブロッケン現象

下山は岳沢に向かった。

吊り尾根はスラブ状の岩ルートが多く、雨の時は怖いことが多いが、幸いこの日はあまり濡れていなかった。それでもザイテングラートに比べると狭い箇所や滑りやすい箇所が多くていやらしい。

相方が昨日からの強行日程でバテ始めた。段差が膝に応えるようだ。

景色は見えないものの、下るにつれて暑くなり、樹林帯に入ると大量の蠅にたかられる。

しんどい、疲れる、暑い。終盤はなんで来たのかと思うくらい愚痴が多くなるが、降りる頃には結局また来ようと思うようになっていた。

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吊り尾根の岩ルート