クモノカタチ

山から街から、雲のように思いつくままを綴ります

北海道で安い宿を探す方法

昨年、今年と北海道を長期間旅行した。実に11日あまり。では今回かかった費用はどのくらいかというと1人12万円くらいである。

内訳は飛行機代5万円、電車代1万円、バス・タクシー代2万円、ホテル代1万5000円、食事代1万5000円、土産物1万円。ほとんどが移動にかかった費用となっている。

何が安いかと言えば宿泊費。ホテルはビジネスホテルばかりで4泊あとはテント泊でこちらは幕営料が1000円ほど。網走・呼人浦は無料だったし、大雪山と知床の山中は山小屋も管理人もないので無料。払ったのは国設知床野営場と国設羅臼野営場のみで1泊500円ほどなのだ。安く済むわけである。

しかし、いくらテント泊が安くても全日程キャンプするのは難しい。今回も途中で豪雨があったので、さすがにその日はホテル泊にした。ではどこで泊るのが安いのか、これが問題である。

今回、探してみてわかったポイントをつらつら書いてみたい。

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最後に泊まった釧路(駅はずいぶん古い)

①中くらいの街を選ぶ

最終的にホテル泊まりにしたのは北見、網走、釧路。

知床斜里、ウトロ、羅臼などに泊まるのも考えたが、これら小規模の街の方が概して宿代高い。競合するホテルが少ないと高くなる傾向にある。去年泊まった稚内は小樽よりも高かった。おそらく宿そのものが少ないからだろう。

 

②観光地に近すぎない街を選ぶ

最初、登山の関係からウトロや羅臼で宿を探してみた。しかし、こういう街はなぜか高い。現地に行ってみると納得したのだが、これらの街でわざわざ泊まるのは観光客だけなのである。

ウトロなんかは結構立派なリゾートホテルがあったし、ここまで来ると宿泊も観光地価格になってしまう。

 

③2人で泊まる

1人4000円という宿は探しにくいが、2人8000円なら見つかる。これが3人、4人となるとなぜか割高になってしまう。部屋のサイズは1人用と2人用はそれほど変わらないからだろう。2人で泊まるのが最もコスパがいい。

もっとも1人の場合、ユースホステルライダーハウスなど相部屋式の宿に泊まるという選択肢も増えるのだが。

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ウトロの街並み

偉そうに書いてみたものの、北見では1泊2名5000円という宿を選んで失敗した。

受付に行くと、煙草の臭いがプンとしてやる気のなさそうなおばあさんが出てきた。宿帳へのサインと支払いが済んだらすぐに引っ込んでしまう。本当に何の説明もない。おまけに部屋も煙草臭いし、テレビは本体とリモコンでメーカーが違い(当然つかない)、風呂場のシャンプーのケースには長い髪がまとわりついていた。

しかし、廊下でわりと人とすれ違ったところを見ると、安いのにつられて泊まっている人が結構いそうだった。ただ二度と泊まりたくはない。結局のところ安いにはそれなりのワケがあるのだ。

まあ来年また行くことがあれば、安くて感じのいい民宿とかに泊まれたらなあとか考えている。

駅弁は北海道に限る

今年の北海道の乗物はこんな具合だった。旭川空港から旭岳ロープウェーをタクシー、層雲峡から上川をバス、上川から北見を電車、北見から網走を電車、網走からウトロをバス、ウトロかたカムイワッカをバス、羅臼から釧路をバスと目まぐるしく移動した。

移動が長いと困るのが食事。コロナ禍でおいそれとマスクを外せないのが困るところだが、「腹が減っては軍はできぬ」ということで時々駅弁の世話になっている。

昨年は旭川から稚内までの移動が昼食時ということで「わっぱめし」を買って食べた。このわっぱめしのいいところは海鮮が入っていて北海道を感じられることと器が何かと使えること。実は今年の北海道にも昨年の器を持って行き、テント食に使ったりした。

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昨年、旭川で買ったわっぱめし

ところが今年の夏の北海道はバス移動が多く、駅弁の入手は難しかった。朝一番で移動するケースが多かったので、空腹に悩まされることはなかったが、何が売られているのかは気になる。しかしながら電車で食べるのはいいとしてもバスに持ち込むのはどうかという気がしてしまう。

そんな葛藤の末、釧路での最後の夜は駅弁を食べることにした。釧路の駅前にはあまり食事処がなく、いい加減コンビニ飯にも飽きたというのもある。もっともまともな飯が駅弁だったのだ。

まあそんなわけで買ったのがこちら。

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上がカニ飯、下は鮭親子飯。

さすがは北海道。鮭とイクラが北海道産である保証はないけど、駅弁とは名物を入れるものなりの精神が素晴らしい。

今はどこの街でもチェーン店と紋切り型の街整備で旅情を感じる景色というものが失われつつあるが、せめて駅弁くらいは旅の匂いをさせてほしい。

北海道土産には鮭児より「時しらず」

昨年も北海道を利尻・礼文・小樽と回ったが、大した土産を買わなかった。せいぜい自宅用に風鈴を買ったくらいだ。

小樽では駅からほど近い三角市場でいろいろ眺めたものの、丼を食べるにとどまっている。どうも旅先のものを持ち帰りたいという執着がわれわれにはないようだ。

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昨年は眺めるだけで蟹も買わず

しかし、今回は唐突に実家に何か送ろうかという殊勝な気持ちが起きた。特に何があったわけでもない。ただ、なんとなくである。

北海道と言えば「蟹」。旅の最後に釧路の和商市場へ行くと花咲ガニや毛ガニが並んでいる。どれがいいのか皆目見当が付かない。うろうろしていると、一人のオジサンがこっちへ来いとばかりに手招きをする。ふらふらと寄っていくと

「北海道と言えばこれ、『時しらず』。蟹なんかはどこでも同じ」

と突然弁じたててきた。急ぐこともないので「ほー、ほー」と聞く。正直な話、「時しらず」とは何かさっぱりわからない。

鮭児はマスコミが過剰に煽っただけ。あんなの珍しくもないし、どれも小さい」

鮭児はロシア・アムール川産の鮭が日本近海に迷い込んで網走あたりで捕獲されたものである。ただ、小さい個体が多くて味にもバラつきがあり、「幻の魚」と言ってマスコミが煽りすぎたために法外な金額が付いているとのこと。それに対して時しらずは時期外れに戻って来ようとしてしまった鮭で、生殖にエネルギーを使っておらず、身に脂が乗り切っているらしい。

オジサンの熱弁を聞きつつ時しらずを見ると、立派な身が並んでいる。もっともどれがいいのかわからないのだが、切り身で「極上」と「特上」と「高級」と名無しが並んでいて

「まず味わうなら特上以上。極上は脂がサラサラしていて後に残らない。ウチは鮭とイクラだけで30年も商売している」

とさらにさらに熱いトークが続く。向かいの蟹専門店には迷惑な話だが、熱いトークに押されて「それじゃあ極上を」と言ってしまった。

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北海道と言えば「時しらず」らしい

最初は両親にという殊勝な思いから始まった土産物探しだが、自分も食べたくなったので相方の実家に送ることにした。8月の終わりに法事があり、その時期に合わせて送ればご相判にあずかれるという魂胆である。

そして食べた時しらず。確かにしつこくない脂で酒よりご飯が進む。とにかくあのオジサンは正しかったということにしたい。

テントの中で何をする?

夏休みが終わり、北海道から戻ってからぼんやりしている。本来の怠け病なのか北海道の後遺症なのかわからない。

北海道ではテント泊を6泊した。そう人に言うと「過酷な旅で」と言われることもあるが、慣れてしまえばホテルよりよほど楽である。四畳半くらいのスペースにマットを敷いて寝袋を広げればやることはほぼない。やることがないのがテント泊なのである。

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網走・呼人浦でのんびりする

テント泊でもわれわれのようにバーベキューをするでもなく、ハンモックを吊るすこともない場合に何をするか。

①昼寝する ②散歩する ③本を読む ④本格的に寝る

のどれかになってしまう。雨でも降ると散歩もできないので、本を読むか寝るしかない。北海道では今回ジョン・クラカワー『空へ』と吉村昭『破獄』の2冊を読んだ。相方も遠藤周作『愛情セミナー』を読んだようだ。

あと暗くなったら寝るしかない。夕食も装備をなくす可能性があるので、できることなら明るいうちに終わらせた方がいいし、トイレが近くなるので大酒も止した方がいい。さらに椅子もなければ読書も長時間は続けられないし、寒くなれば寝袋から出たくなくなる。

羅臼平でのテント泊ではなんと4時には夕食を終わらせ、日暮れに一旦起きだし、7時には寝てしまった。朝4時台に起きているとはいえ、早すぎる。

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羅臼平の夕暮れ

装備が最小限の山岳テントでのテント泊は実にやることがない。やることがないをどう捉えるかは難しいが、たまにはやることのない幸せを感じるためにテント泊に行きたくなる。

北海道で手に入るオリジナル・ナルゲンボトル

昨年、買おうか迷ったものがある。それは利尻限定のナルゲンボトルで確か2000円くらい。相方に訊いたらそんなにしないと言い張っていたが、ネットで見たら税込2200円なので間違いなかった。結局相方が利尻のゆ~にキャンプ場で即買いしていた。

利尻山幾何学的にデフォルメしたもので非常にカッコイイ。その時は荷物も増えるし要らないと思ったのだが、1年を経て500mlのナルゲンは案外使えることがわかってきた。

 

ナルゲンボトルのメリット。ペットボトルに比べて

①飲みやすい。②蓋もなくさない。③閉じやすい

などなど。デメリットは旅の途中で捨てられない、少々高いことくらいか。

そんなわけで今回の旅で最初に登った大雪山で思わず買ってしまった。お値段は1800円+消費税だったかな。またしても山のデザインになった。

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ちなみに知床自然センターでは知床オリジナルボトルとしてヒグマデザインのものが手に入る。ウトロの知床野営場で1Lモデルのものを持っている人がいてしげしげ見てしまった。ただデザインは大雪山モデルの方がかわいいので満足である。

さらにちなみに、ナルゲンと書いているけど、正確には「ナルジン」。来年以降またオリジナル・ナルジンを買うことになるのだろうか。

北海道の回転寿司の実力~北海道を巡る食旅⑥

北海道の実力で未だ試せてないものがある。「寿司」である。

寿司、まあ標準的にイメージするのは江戸前寿司で、酢飯に生の刺身を載せたもの。もともとは気の短い江戸っ子がそのままネタを載せただけのものを食べてしまったのが始まりで、本来の寿司は発酵食品である。

それはともかく今や寿司とは専ら江戸前を指すので、魚の鮮度が命。なればこそ北海道での回転寿司については否が応でも期待が高まっていた。

 

羅臼岳から羅臼に下山したわれわれは路線バスで釧路に行った。実に4時間以上の旅。荷物をホテルに置いて寿司探しに向かった。

しかし、駅の周辺をいくら探しても寿司はない。というか日曜日のせいか開いている店がない。釧路駅根室、網走への分岐点であり、交通の要衝とばかり思っていたが、今はイオンモールなどが建ち並ぶ国道沿いに集客を奪われているらしい。駅から30分歩いてようやく「なごやか亭」というチェーン店ぽい回転寿司を見つけることができた。

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北海づくしの3巻

回転寿司はまあまあ混んでいて、店内は若い店員が多くて活気に満ちている。回転寿司ではあるが、回っているネタは限られているので、紙に書いてカウンター越しに渡す方式がメインのようだ。とにかく北海道産を狙って注文する。

まずは筋子、サンマ、あともう一つは忘れたが、北海づくし。やはりサンマが美味い。まだ時期ではないので完全な生ではないが、東京ではない味。相方は再びサンマだけを注文していた。

 

お次はメンメ。本州で言うキンキである。高級魚になるけど、北海道に行ったのだから食べなくてはならない。

変わり種としてクジラの頬肉。臭みと旨味がなかなか癖になりそう。『英国一家日本を食べる』で筆者が「クジラがあまり美味しくなくて安心した(クジラを食べなくて済むから)」てなことを書いていたが、きっとこれを食べたら困惑するだろう。

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クジラの頬肉

あとはホッキ貝、つぶ貝、ホタテの貝づくし。

まるで見栄えはしないけど、これも北海道ならでは新鮮。

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貝づくし3巻

 2人で9皿ほど食べて3000円くらい。一皿は100円から350円くらいで100円寿司に比べて高いが、まあネタがどれも大きいのでなかなか満足である。

東京の回転寿司より高いが、店員がしっかり握っているようだし、回らない寿司より安いという意味では北海道の食の楽しみとして行ってよかった。寿司を食ったら腹ごなしということでわれわれはその後何もない平原、釧路湿原を見に行った。

ニシンとハッカクの味~北海道を巡る食旅⑤

北海道には鰊御殿というものがあるらしい。もともとは積丹の方にあり、現在は小樽に移築されているそうだ。明治、大正とニシンの豊漁によって財を成し、それによって北海道に立派な家を建てた人々は多いという。ニシンは食うだけでなく肥料にしたという。

知床を硫黄山から3日かけて羅臼岳に登頂し、羅臼に下山したわれわれはまず温泉に入り、食料の調達に出かけた。バックパックの中にはパスタが1食分あったものの、炭水化物だけの食事にもう飽きていたのだ。

羅臼岳から下山してテントを張った羅臼野営場から羅臼の市街までは5kmもあり、下山後の足には少々酷だったが、海沿いにある道の駅まで歩いて行った。

そこでは主に干物、一夜干しが売られており、昨年小樽で心証を良くしたハッカクと北海道名物ニシンの一夜干しを購入した。

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ハッカクの一夜干し

キャンプ場に戻ると、さっそく網を取り出して戦利品を炙ることにする。

まずはハッカク。ハッカクは鱗のトゲトゲした魚で鰭が大きい。昨年食べた刺身はこんな感じ。

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刺身のハッカク

白身ながら脂が乗っている。久しぶりに小型ストーブ用の網を持って行ったが、脂が滴ってたちまちガス缶が汚れた。

食べてみると脂が決してしつこくなく上品な味わいである。

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ニシンの一夜干し

次にニシン。なんと1本98円である。

全長30cmくらいの分厚い身で、網に載せてあぶるとたちまち脂が滴り落ちた。北海道物産展で売っている高級ホッケでもこんなことはない。

京都の大学に行っていた時代、学生食堂で「ニシンそば」があったが、あのパサパサした感じはまったくない。魚としての臭みはあるものの、トロを炙ったくらいの脂である。

テント場の気温は15℃くらいか。虫はさほど多くはないので、芝生にサーマレストのマットを敷いてその上に胡坐をかき、熱々のニシンをつつきながらビールを飲む。ふわふわと日中の疲れが身体に落ちてきて、周囲のテントからの会話がポツポツと聞こえてくる。

羅臼野営場には15年前に来ていて、その時は自転車だった。北海道を横断すると意気込みだけはあったが、たった1人の寂しい夕食で何を食べたのかも思い出せない。その時とキャンプ場の景色はあまり変わったと思えないが、ずいぶん自分自身は変わったと思いながら徐々に夜の帳が落ちていった。